セグメンテーションをすることは大事であるとよく耳にするけれども、そもそも対象市場をわざわざ小さな市場へとセグメント化する必要性などあるのだろうか?
また、具体的にセグメンテーションする方法も、そのポイントとともに教えてほしい。
マーケティングにおけるセグメンテーションの重要性は、まだまだ日本の中堅・中小企業には認識されていない概念であり、そもそも市場を細かく細分化して、特定の顧客に絞るという考え方がしっくりこない経営者の方は多いようです。
そこで、この記事では、セグメンテーションの意義・重要性についてお話し、さらには、市場を細分化してセグメント化する際のポイントも説明することとしますね。
この記事を読むことで、マーケティングではセグメンテーションという概念が必須であることが理解でき、特定市場に絞り込む際のポイントが理解できます。
本記事は、中堅・中小企業の事業再生に20年以上取組んで、200社以上の再生案件に関与して、マーケティングと管理会計と組織再編の力で再生に導いた事業再生のプロである公認会計士が書きました。
セグメンテーションとは何か?
セグメンテーションとは、対象市場における顧客の属性(性別、年齢、所得、学歴、収入等)やニーズに基づいて、顧客を細かいグループ(セグメント)に分けることをいいます。
イメージ的に簡単な図示をすれば、上記の図のようなものをセグメンテーション(市場の細分化)といいます。
細分化すると言ってもランダムにグループ分けをするのではなくて、何らかの意図を持った基準で、市場=顧客を分類しなくてはなりません。
セグメンテーションの必要性
産業革命以降、様々な技術が開発され、その技術をベースに新しい製品がどんどん作られ、人々の暮らしをより豊かにしてきました。
たとえば、1908年にヘンリー・フォードはT型フォードという自動車を発明し、生産・販売しましたが、自動車という当時では非常に高価で庶民には手が届かなかったものを、大量生産による大幅なコストダウンによって販売価格を引き下げ、マス広告を展開して多くの人の認知を取ることによって大量販売することでビジネスとして成立させました。
このようなモノが不足していた時代には、多くの人が機能重視で同じものを欲しがりました。
移動手段として馬車がメインであった時代に、手が届く価格で自動車が登場したのですから、自動車であればよかったわけです。
T型フォードも、低価格化を目指した大量生産のために、自動車の形は1種類、黒色のみであったにもかかわらず、世の人々はこぞって自動車を欲しがったのでした。
このような時代には自動車市場を構成する顧客を何らかの基準を持ってセグメンテーションする必要など全くなかったわけで、自動車市場を構成する顕在顧客、潜在顧客を問わず、顧客すべてに機能重視の単一のメッセージをマス広告でコミュニケーションすればよかったのです。
「馬車と違ってガソリンで動く自動車です。1台850ドル。おひとついかが。」
ところが大量生産・大量販売は、生活者の欲望を多元化する結果となりました。
ますます人々の所得も向上し、ヒトとは違うことを求める生活者が急増し、顧客ニーズの多種多様化がどんどん進みました。
このような市場においては、従来のように市場全体に向けて製品やサービスを作っても、どの顧客層(セグメント)の欲求をも満たすことない、当たり障りのない、売れない商品で終わってしまうことになります。
1908年に発売され、世の中を一世風靡したT型フォードも、所得階層ごとにセグメンテーションし、各々のセグメントごとの自動車に対する異なるニーズを満たす車種を製造販売することで台頭してきたゼネラル・モーターズに市場を奪われることになったのも、市場ニーズの多様化の一例です。
マーケティングの大家であるフィリップ・コトラー先生によれば、先進国においては1973年の第1次石油危機の前後から、あらゆる製品カテゴリーで成熟化が進み、顧客の製品やサービスに対するニーズが多様化し、対象市場において顧客をセグメンテーションし、どのセグメントにターゲティングするのかをしっかりと検討することが求められる時代になったということです。
また、どのセグメントに注力をするかをしっかりと決めることができれば、マーケティング戦略も効果的なものとなる可能性が高く、マーケティング・コストの効率的な利用につながるとともに、営業活動の効率化にもつながります。
セグメンテーションとターゲティングとポジショニング
セグメンテーションの重要性を説いたのはフィリップ・コトラーですが、彼がまとめたフレームワークにSTPと呼ばれるものがあります。
セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の各々の頭文字をとってSTPと呼ばれるものです。
何らかの基準で市場を細分化してセグメンテーションを行ったら、どのセグメントを狙っていくのかを決めることをターゲティングと呼びます。
どのセグメントにターゲティングするかは、その差異分化した市場における競合先の状況や、自社の経営資源から考えた強み・弱みなどを考慮に入れながら決めることになります。
そして、ターゲティングした市場におけるKBF(=Key Buying Factor=購買決定要因)を洞察することで、自社のポジショニングが決まることになります。
ターゲティングとポジショニングは別稿にて詳しくお話しすることにしますね。
なお、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)のSTPの検討は、環境分析等の後を受けて実施することになります。
セグメンテーションにおける分類軸
さきほどから、定義した対象市場を何らかの基準でセグメントすることをセグメンテーションするというのだと書いてきましたが、その何らかの基準が、ここでいう分類軸になります。
一般的にセグメンテーションで使われる分類軸は、大きくは4つあり、ジオグラフィック変数(地理的変数)、デモグラフィック変数(人口動態変数)、サイコグラフィック変数(心理的変数)、ビヘイビア変数(行動変数)の4つです。
セグメンテーションの分類軸となる各々の変数を1つずつ見ていきましょう。
ジオグラフィック変数(地理的変数)
国、地方、県、市、町村など、または地域の人口規模や人工密度、さらには天候の傾向などによって、対象市場における顧客を細分化する方法です。
たとえば、日本/海外、西欧/北欧/東欧/南欧、北米/中米/南米、駅前/郊外、100万人以上/100万人以下等々です。
ジオグラフィック変数の活用例としては、カルビーのポテト・チップスの味が地方ごとに異なっていたり、セブンイレブンのおでんの出汁が、関東を関西では違っている他、おでんの具材も地域によって特徴的である、などがあげられます。
デモグラフィック変数(人口動態変数)
性別、年齢、学歴、職業、収入、ライフサイクルなどに基づいて対象市場の顧客を細分化してグループ化する方法をいいます。
例えば、学歴であれば、中卒、高卒、専門学校卒、短大卒、大学卒、大学院卒に分けるのが一般的ですし、
ライフサイクルであれば、独身か既婚か、子供の有無、子供のライフステージ等で分類を行います。
職業の場合は、製造業、旅行業、IT産業等の業界で分類する方法と、営業職、技術職、マーケター等の職種で分類する方法があります。
また、性別と年齢の2軸を使う方法としては、伝統的にM1~M3層、F1~F3層に分類することがあります。
ここでM1層=20歳~34歳の男性、M2層=35歳~49歳の男性、M3=50歳以上の男性、F1層=20歳~34歳の女性、M2層=35歳~49歳の女性、M3=50歳以上の女性を指しています。
年齢ごとの収入や社会的地位や、ライフステージも異なるので、性別と年齢のセグメントごとに一定の消費特性等があるものと考えるセグメンテーションになります。
デモグラフィック変数は、実際の消費者のニーズや製品・サービス使用率などと密接に結びつくことから、また、人口動態をもとにしたデータは、公的機関の統計や、民間企業のリサーチなど利用可能な形で公開されているものも多いことから、セグメンテーションでよく使われる分類軸です。
デモグラフィック変数による分類例として、光文社の発行する女性向けの雑誌があります。
女性を年齢でセグメンテーションし、大学生にはJJ,20代にはCLASSY、30代にはVERY,40代にはSTORY、50代にはHERSと各々の年代のニーズとインサイトに合致したコンテンツを毎月掲載して、出版不況と言われる業界の中で人気を博しています。
サイコグラフィック変数(心理的変数)
価値観、性格、パーソナリティー、趣味嗜好、購買動機、社会階層、ライフスタイル等にもとづいて市場や顧客を細分化することを、サイコグラフィック変数に基づく分類と言います。
スタンフォード大学のエレベット・M・ロジャースが「イノベーション普及学」という著書の中で、1962年に提唱した「イノベーター理論」による市場の細分化はサイコグラフィック変数に含まれます。
他には、アメリカで生活者分析手法としてよく使われるVALSや、これを日本向けに改良したJapan-VALSなどもあります。
1980年代以降、消費が多様化するにしたがって、従来のジオグラフィック変数、デモグラフィック変数で見ても均一としか見えない消費者の間でも消費に対する傾向が異なることが目に付きだしました。
たとえば、生活環境やプロファイルがまったく同じである2人の28歳の主婦が、食品をデパ地下で買ったりコープで買ったりすることなどです。
こういったこれまでの変数で説明できない行動を説明するために、サイコグラフィック変数の重要性が高まりました。
そして、90年代以降には、特定の価値観やパーソナリティーを持った消費者をどうグループ化し、効果的な広告メッセージを発信するかが、マーケティングの大きな課題となりました。
ビヘイビア変数(行動変数)
購買状況、購買シーン、購買頻度、購買パターン、製品に対する知識、態度、使用場面、反応等にもとづいて対象市場の顧客を細分化することです。
購買状況とは、既存客なのか、新規客なのか、休眠客なのかの分類をいい、購買シーンとは、スーパーで買うのか、百貨店で買うのか、ネットで買うのか、購買頻度としてはヘビーユーザー、ミドルユーザー、ライトユーザー、ノンユーザーなどのように分類を行います。
近年では、インターネットの普及とアクセス解析ツールの開発によって、従来は個々の顧客ごとの属性を把握するのが難しかった行動変数が、ウェブサイト上での顧客の遷移を基に測定することができるようになったため、有力なセグメンテーション変数として活用される機会が増えています。
たとえば、MA(マーケティング・オートメーション)や、SFA(営業支援システム:Sales Force Automation)を導入した企業は、マーケティング、営業のいずれのフェーズにおいても、デジタル上に顧客が残した行動履歴を蓄積して分析できる技術がどんどん進歩しており、データ・ドリブンを活用して行動変数によるセグメンテーションがどんどん使われ始めています。
セグメンテーションの4R
先程の4つの分類基準のいずれかを使って対象市場をセグメンテーションした後は、その中のどのセグメントを狙っていくのかを決定する「ターゲティング」を行うことになります。
複数あるセグメントの中でどれを選択するかは、その後のマーケティング戦略を効果の高いものとするためにはとても重要な作業になります。
最終的にターゲティングするべきセグメントを決定するために、候補となるセグメントを絞り出すフレームワークがセグメンテーションの4Rと呼ばれるものになります。
セグメンテーションの4Rとは、「Rank(優先順位)」「Realistic(規模の有効性)」「Reach(到達可能性)」「Response(測定可能性)」をいいます。
Realistic/Realistic scale(規模の有効性)
Realisticとは、市場規模が、会社が求める売上や利益を見込めるだけの大きさがあるのかどうかという点でセグメントを評価する視点をいいます。
あるセグメントへの参入が自社の経営資源を有効活用できたり、競合先が未発見のカスタマー・インサイトを発見しているなどの理由で非常に魅力的に見えても、現実的にそこでビジネスが十分成立するだけの市場規模があるのかどうかを事前に確認することはとても重要な視点になります。
Reach(到達可能性)
Reachとは、あるセグメントに対して、商品やサービスの提供が可能なのかどうか、または、広告宣伝やプロモーションが有効にリーチできるのかどうかを事前にチェックすることです。
たとえば、中国人観光客に人気の高い、国内生産の農産物を、中国本土の人々へ販売するとした場合、その農産物を鮮度を保ったまま中国まで輸送が可能なのかどうか、また、彼らにアプローチするためのプロモーションを的確に立案できるのかどうかといったことを事前に検討することはターゲティング前にとても大事な作業になります。
Response(測定可能性)
ターゲティングしたセグメントに実際に広告宣伝やプロモーション、さらには販売を行った後に、ターゲットからの反応を測定して数値化することが可能かどうかという視点も、ターゲティング前の検討ポイントとしてとても重要な視点になります。
戦略等は仮説にすぎないので、実際に活動を行った後の市場における顧客の反応を見ながらPDCAの仮説検証サイクルを回すことはとても大切だからであり、その判断材料としてのレスポンスの数値には重要な意義があります。
Rank(優先順位)
Rankとは、様々な視点で各々のセグメントの評価を行って、セグメントの優先順位付けを行い、優先順位の高いセグメントからターゲティングすることが基本となることを意味します。
これら4R以外にも、Rate/rate of Growth(成長性)、Rival(競合状況)の2つのRを加えて、6Rと呼ぶこともあります。
Rateはそのセグメントにおける市場の成長性を指し、成長性が高いセグメントは評価が高くなります。
また、Rivalは市場における競合状況を指し、ポーターの5フォース分析をもとに分析を行うことになります。
セグメンテーションの実施方法
先程まで、正方形で定義された市場を4つのセグメントに分けていましたが、この時には、縦軸と横軸に何らかの分類基準を用いてセグメンテーションを実施していることが暗黙の裡に含意されていました。
縦軸と横軸を用いて市場を細分化するわけですが、この縦軸と横軸に先ほどの4つの変数を用いるわけです。
たとえば、定義された市場が日本在住の全員であったとすると、縦軸に性別、横軸に年齢というデモグラフィックな変数を取れば、対象市場のセグメンテーションは下記のように行えます。
そして、この各々のセグメントに当社製品の購買データをプロットしたら以下のようなものが得られます。
全体の顧客数の中で各々のセグメントが占める顧客数の割合を示しているものとします。
このセグメント情報を見れば明らかなように、この商品は圧倒的な男性からの支持によってビジネスが成り立っており、女性の顧客は全体の10%程度にしかすぎません。
また、60歳以上のシルバー世代には全くと言っていいほど売れていないこともわかります。
このようなセグメント情報が得られた場合に、今後どのセグメントに注力していくかを絞り込むフレームワークが4Rでした。
Realisticの観点からすれば、女性は人口の半分を占めますからまだまだ市場規模は大きいですし、60歳以上のシルバー世代も高齢化社会でどんどん数が増えていますので、こちらの市場規模も大きいと言えます。
どちらの市場も、これまでの販売や広告宣伝の手法が使えますので、ReachやResponseも問題ありません。
女性の中でもさらにどのセグメントを狙うのか、シルバー世代でもそんな嗜好を持つ人を選ぶのか、サイコグラフィック変数を用いてさらにセグメンテーションを実施する必要がありそうです。
ここで用いたセグメンテーションのための分類軸は、年齢X性別という、デモグラフィック変数Xデモグラフィック変数でした。
本ケースの場合には、問題個所の発見には役立ちましたが、顧客の気持ちや、買う理由、買わない理由などの原因は全く見えません。
そういったものを見つけるためにはサイコグラフィック変数やビヘイビア変数を用いてセグメンテーションを行う必要があるのです。
また、このケースではデモグラフィック変数Xデモグラフィック変数の2軸で市場の細分化を行って問題個所の発見ができましたが、たとえば、同じデモグラフィック変数Xデモグラフィック変数である、所得X居住地で細分化を行っても何ら問題点さえ発見できないこともあり得ます。
このように、分類軸の変数として何を選択するかはその後のマーケティング戦略の有効性に大きく関わってきますので、適切な2軸を選択することがとても重要になります。
セグメンテーションの事例
日清カップヌードル
さきほど、年齢X性別という、デモグラフィック変数Xデモグラフィック変数で市場を細分化するケースをご紹介しましたが、日清のカップヌードルもこのセグメンテーションをベースに新市場の開拓を行った事例であるということができるでしょう。
日清のカップヌードルは女性の購入者が少なく、また、シルバー世代の購入者もほとんどいないというような状況でした。
そこで日清食品は、市場調査を実施して、女性がカップヌードルを買わない理由を調べたところ、「野菜が取れないから健康に悪い」、「ズルズルと音を立てて人前で食べれない」、「カロリーが気になる」などのネガなインサイトが見つかったことから、こういったインサイトを持つ20代から30代の女性(サイコグラフィック変数X年齢X性別)のセグメントをターゲティングして、その市場へ「日清カップヌードル・ライトプラス」を投入し、女性の顧客数を増やし、新市場の開拓に成功しました。
また、シニア世代の中でも、仕事・趣味などに意欲的で、健康意識が高い傾向にある活発な高齢者と一般的に定義される「アクティブ・シニア世代」のセグメント(サイコグラフィック変数X年齢)をターゲティングし、彼らのインサイトである「少量でいいから美味しいものを食べたい」にフォーカスし、この市場へ「カップヌードル・リッチ」を投入することで新市場の拡大に成功しています。
Apple
Appleが登場する以前の世界のパソコン市場は、性能X機能(デモグラフィック変数Xデモグラフィック変数)で細分化された市場の中の、高性能X多機能を求める顧客市場で激しい競争を行っていました。
その市場では、性能アップと新しい機能の開発を宿命づけられた際限のない競争が延々と繰り広げられ、ある新しい機能による差別化は瞬時に模倣され、中長期的には価格競争だけが差別化要素とならざるを得ませんでした。
そのような中でアップルが行ったのが、対象市場をセグメンテーションする際の分類軸の大胆な変更でした。
彼らは、従来のような「品質X機能」というデモグラフィック変数の2つの要素に加えて、新たに3つ目の分類軸としてサイコグラフィック変数を導入してみました。
つまりは、「パソコンはクールなものを使いたい」と思うか否かの分類軸を導入したのです。
そして、従来の分類軸の「品質X機能」についてはそれほど高いスペックを求めないユーザーの市場へとズラシ、「パソコンはそれほどのスペックは求めないけれども、クールであってほしい」というセグメントをターゲットとしたのでした。ここで生まれたのが伝説の名機iMacです。
このappleの事例が教えてくれるのは、業界で通例となっているセグメンテーションの軸を、別の軸に取り換えてみるという作業の重要性です。
インサイトやニーズが多様化している現代の生活者をグルーピングする際の分類軸には、まだまだ我々が気付いていない効果的な分類軸があると思われ、その発見を目指すことがこれからの時代のマーケティングにはとても求められていることだと思います。
競合先がまだ気づいていない新たなセグメンテーションの分類軸を見つけることができれば、市場の再編を行ってAppleのように市場のリーダーに躍り出ることも可能であるということを示唆してくれています。
事業再生におけるセグメンテ―ション
事業再生のフェーズに落ち込んでいる企業の多くは、世のなかの生活者のニーズと、商品やサービスの提供価値との間にズレが生じてしまっていることに気付いていません。
先代の後を受けて粛々と経営を続けていても、知らぬ間に企業を取り囲む環境が変わって、その影響を受けて生活者の心理も変化して、商品やサービスに対するニーズが全く変わってしまうことは当然と言えば当然のことなのですが、それは目に見える変化ではないので、大方の経営者の目には映ることがないのです。
事業再生のフェーズに落ち込んでしまった企業の大半は、こういったズレが原因ですので、再度市場の定義から初めて、環境分析を行った上で、対象市場の切り口を再検討し、セグメンテーションの見直しから入るべきなのです。
セグメンテーションの切り口自体が、従前から変化すればターゲットとする特定のセグメントも変わりますから、そのターゲットのインサイトに基づくニーズに沿えるような消費やサービスの見直しを行って、商品やサービスのコンセプトの転換を図る必要があるのです。
中堅・中小企業だと、なかなかこういった事実には気付くことができないので、銀行の指導などで本末転倒なコスト削減や拠点の統廃合などを行いがちですが、そういった施策は根本的な解決策とは言えず、ビジネスの縮小均衡を迎えるだけなので、中長期的にビジネスに悪い影響を与えることも往々にしてあり得るのです。
対象市場のセグメンテーションの切り口から考え直すことは、再生のフェーズにある会社には必須の作業であると思います。
中小企業が事業再生を成功させるポイントについては、下記の記事を参考にされてください。
中小企業が事業再生に取り組む時に、経営者が念頭に置いておくべきポイントって何だろう。中小企業が事業再生のフェーズから抜け出すために必要なことって色々言われているけど、その道のプロの人からしたら、どんなポイントを押さえるべきなんだろう。
事業再生におけるマーケティングの必要性については、下記の記事を参考にされてください。
事業再生にマーケティングは必要じゃないのかな。再生のアドバイザーが銀行の紹介で入ってきたけど、どう見ても普通の税理士でマーケティングなんてできそうにないんだけど、本当に当社の再生はうまくいくのかな。こんなお悩みを抱えた経営者の方は必見です。
事業再生を相談するべき専門家の選び方については、下記の記事を参考にされてください。
事業再生に取り組むにあたって誰に相談すればいいのだろう。再生支援協議会に行くと会計士や税理士を紹介してもらえるそうだけど、それで本当に事業再生は成功するのかな?こんなお悩みをお抱えの経営者の方は必見です。誰に相談するべきかがわかります。