ダイレクト・マーケティングとは?【メリット・デメリットまで解説】

ダイレクト・マーケティングってよく耳にするし、なんとなくわかっているようで、実はしっかり理解できていないという経営者の方は多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、ダイレクト・マーケティングの定義、特徴、メリット、デメリットなどについて詳しく説明したいと思います。

この記事を読むことで、ダイレクト・マーケティングの本質がしっかりと理解でき、今後レスポンス広告を打つときなど、一連の施策を実施すするにあたって悩むことがなくなります。

本記事は、中堅・中小企業の事業再生に20年以上取組んで、200社以上の再生案件に関与して、マーケティングと管理会計と組織再編の力で再生に導いた事業再生のプロである公認会計士が書きました。

ダイレクト・マーケティングとは何か?

ダイレクト・マーケティングとは何か?アメリカのダイレクト・マーケティング協会の定義に従えば、「1つ又は複数の広告メディアを使い、測定が可能な反応や取引を、どのような場所でも享受することができる、双方向のマーケティング」をいいます。

この定義が少し難解であるという理由からか、ダイレクト・マーケティングを「外部の流通チャネルを介さずにターゲットとなる消費者と直接のコミュニケーションを図ることに主眼を置いたマーケティング」というように定義している事例をよく目にしますが、本質的な定義とは言えません。

先に書いたダイレクト・マーケティングの定義も、アメリカのダイレクト・マーケティング協会が示しているその特徴を見ることで理解は深まることと思いますので、見ていきましょう。

ダイレクト・マーケティングの特徴

ダイレクト・マーケティングの特徴

“an interactive system of marketing that uses one or more advertising media to effect a measurable response and/or transaction at any location , with this activity stored on a database.”

1つ又は複数の広告メディアを使い、反応を獲得する双方向のマーケティングである。その効果は測定可能でなければならない。取引は場所を固定せずに行われ、れらの活動はすべてデータベースに蓄積、活用される。(アメリカ・ダイレクト・マーケティング協会(DMA))

ここに書かれている文面には、ダイレクト・マーケティングの特徴が網羅されていますので、順に見ていきましょう。

双方向のコミュニケーションであること(=Interactive)

この双方向コミュニケーションについては、企業側がうった広告に対して、「新規申込」や「資料請求」、「リピート購入」などの顧客からの反応(レスポンス)に対して、企業側が「商品の発送」や「お礼の連絡」「追加購入の提案」などの反応を示すというような、企業と顧客との間のコミュニケーションを指すという説明がなされることが多いのですが、それはダイレクト・マーケティングの双方向性の一面しか捉えられていないのではないかと考えます。

たとえば、近所の商店街に出かけて今晩の夕食のおかずを考えて、魚屋さんをのぞくこともあるでしょう。
その時には、多くの方が魚を選ぶにあたって、魚屋の大将といろんな会話を交わすはずです。

魚屋「今日は、房総のいい金目鯛が入ったよ!」

あなた「へえ。房総の金目鯛って美味しいの?」

魚屋「黒潮と親潮がぶつかる漁場で獲れた奴だから、そこいらの金目とは全然味が違うのさ!」

あなた「そんなに違うものなの?」

魚屋「全然違うんだよ。潮の流れの速さが違うからさ、魚の鍛えられ方が違って、身が締まってぷりぷりなんだよね!」

あなた「へえ、そうなんだね。試食はできるの?」

魚屋「ちょっと待ってね・・・はい、どうぞ!」

あなた「・・・甘くて美味しい。ホント美味しいわ。」

魚屋「今晩のおかずにどうですか?旦那さんも上機嫌になりますぜ!」

あなた「でも、金目だからお高いんでしょ?」

魚屋「ところが、このサイズで今は2千円。」

あなた「えっ。金目鯛がそんな値段で買えるの?」

魚屋「コロナの影響で料亭に回るような魚が、うちらの店にも安く回ってきてるんですよ。だから、今はこんな値段でこのレベルの金目が提供できるんですわ。」

あなた「じゃあ、その小アジもつけてくれる?」

魚屋「かしけえ奥さんだな!はいよ!」

こんな感じで、あなたは魚屋の大将と会話をして、大将がおすすめする魚を買って帰るでしょう。

これはリアルな世界での魚屋における大将とお客の双方向の会話ですが、このリアルな会話と同じような双方向のコミュニケーションが生じるようにダイレクト・レスポンス広告が設計されているということが、ダイレクト・レスポンス・マーケティングの本質的な双方向性なのだと私は考えています。

ダイレクト・レスポンス広告の記載の一部に対して生活者がツッコミを入れて、それに対して広告主側が広告上で回答をするというようなコミュニケーションが行われているということです。

特定のメディアに縛られず、あらゆるメディアを自由に活用すること。(=One or more advertising media)

ダイレクト・マーケティングは店舗がないことを前提として組み立てられたマーケティング手法であるので、店舗がない中でレスポンスを最大化するために、メディアをフル活用します。
特定メディアに縛られることもなく、Webや紙媒体、テレビなど、あらゆる利用可能なメディアを自由に活用するのです。

費用対効果を徹底的に追及すること。(=Effect)

後述するように、ダイレクト・マーケティングでは効果が定量的に測定可能であるので、施策の実施によって得られたデータを利用して、広告費用とレスポンス数や受注数との関係を追いかけて、費用対効果を徹底的に追及します。

ここで、重要な指標が2つあって、その1つがCPA(=Cost per aquisition)であり、レスポンス当たりの広告費用で表現します。CPA(=Cost per response)もほぼ同義です。
もう1つの指標がCPI(=Cost per Order)であり、1受注当たりの広告費で表現することになります。

効果が定量的に測定可能であること。(=Measurable)

「この広告を打ったら、これだけの注文があった」など、施策と結果が数字ではっきりと分かることをいいます。

たとえば、TVCMや新聞広告を出稿して売上が上がっても、その売上増加の原因がそれら広告を出稿したことであるとは言い切れません。
たまたま、お昼の情報番組で、その商品カテゴリーが取り上げられていたからかもしれませんし、雑誌の特集記事でたまたまタイミングよく掲載されたことが原因かもしれません。

つまり、一般の広告の場合には、その出稿と売上の増加の間の因果関係を明確に掴むことが全く不可能なのです。

一方、ウェブ上でのリスティング広告などは、顧客がクリック後に流入したランディング・ページからの注文数をデータで把握することで、かかった広告費と売上との間の明確な因果関係が把握することができることになります。

中小企業でも利用することが多い新聞折込チラシなどでも、チラシからの問い合わせがあった場合には、チラシを見たかどうかを顧客に確認することで、強い因果関係で折込チラシの費用と問合せ数とを紐付けることが可能です。このようにダイレクト・マーケティングにおける因果関係の測定可能性はとても大事な特徴になります。

行動として現れる「反応(=問い合わせ、注文」を重視すること。(=Response)

ダイレクト・マーケティングの一番の特徴は、行動として表れる問い合わせや注文などの反応(レスポンス)を重視することです。

ブランド・コミュニケーションを使ったリテール・マーケティングが「認知」や「ブランド」といった行動に表れない観念的な概念を重視するのに対して、ダイレクト・マーケティングは、「注文」や「問合せ」などお客様の具体的なレスポンスを重視します。

ダイレクト・マーケティングがレスポンスを獲得するために使うコミュニケーション手法が、ダイレクト・レスポンス広告であり、広告に接触した生活者から商品の購入や申込、問合せや資料請求などのレスポンスをダイレクトに得る事を目的とした広告なのです。

ダイレクト・レスポンス広告の特徴等については、下記の記事を参考にされてください。

ダイレクト・レスポンス広告の制作上の課題については、下記の記事を参考にされてください。

基本的に店舗を持たず、広告そのものが店舗の役割を担うこと。(=Transaction at any location )

ダイレクト・マーケティングは基本的には物理的な店舗を持たいないことを前提に設計されたマーケティング手法であるので、広告やWebサイトそのものが店舗の役割を担うことになります。なので、地域や商圏によらず、商品を届けられるならば、どこに住んでいる人にも販売できることになります。

顧客データを詳細に管理することで、上記の特徴を実現すること。(=Database)

上記で書いた6つの特徴は、顧客データを詳細に管理することで実現できる時代です。
顧客リストとデータベースが、個々の顧客に対しての最適なタイミングで最適な提案の実施を可能とさせ、同じ顧客にリピート購入してもらい、収益を最大化するための大切な武器となるのです

ダイレクト・マーケティングの歴史

ダイレクト・マーケティングの歴史ダイレクト・マーケティングの起源は19世紀のアメリカに求めることができます。世界地図を見れば一目瞭然ですが、そもそもアメリカは国土が広とても広い。
そして国土が広い割には小売店舗が少ないエリアが多く、通信販売(メールオーダー)が求められる土壌がもともとあったのですね。

1845年には米国初のメール・オーダーカタログをティファニーが発行し、アメリカ人にラグジュアリーなアイテムの数々を紹介しました。これが通信販売の起源だとする説が有力です。

そして時代が下って、レスター・ワンダーマンは、1967年のMITにおけるスピーチで、初めてダイレクト・マーケティングという概念を世に送り出しました。
以降、ダイレクト・マーケティングの理論に大きな変化はなく現在に至っています。

日本においては、1970年に日本捺染が、当時ではお客様との対面販売が一般的だった呉服の販売を、子会社である日本染芸(現ニッセンホールディングス)を通じて呉服をカタログ通販で販売することを始めました。
その後、カラーテレビの受信契約数が1971年に1,000万台を突破し、カラーテレビが普及すると、テレビショッピングが急速に広がっていくことになりました。

1971年にフジテレビが『東京ホームジョッキー』の商品紹介コーナーを通じて国内初のテレビショッピングを開始し、1972年には、フジテレビが子会社として通販会社の株式会社ディノスを設立しました。

その後、民放各局もテレビショッピングに参入し、1976年にはテレビショッピングを主体とした日本文化センターが創業しています。
1976年に大ヒットしたルーム・ランナーもダイレクト・マーケティングの手法を用いたものでした。

さて、世界的に見ても1990年頃までには、ダイレクト・マーケティングにおけるCPR(=Cost Per Response)が、市場の飽和と競合先の出現等によって高騰してきたため、広告に対する1回の成果(取引)だけでは、ダイレクト・レスポンス広告の採算が取れなくなってきました。

1960年代から続いた右肩上がりの成長市場であれば、新規の顧客を増やすことで売上を伸ばすことができ、企業は魅力的な商品を作り、プロモーションをかけさえすれば良かったわけですが、1990年代になって既に商品が飽和している成熟市場では、新規需要を喚起することはとても難しくなっていたのです。

このようなマクロ環境の変化を受けて、ダイレクト・マーケティングも新規顧客の獲得とともに、顧客の定着化を図る顧客維持施策がとても重要になりました。

このような中で、発達してきたのがCRM(=Customer Relationship Management:顧客関係管理)の考え方になります。
そこでは、ターゲットとの取引を、1回のレスポンスだけで捉えるのでなく、顧客との関係性の構築を前提にした顧客生涯価値(LTV=Life Time Value)で捉える考え方が重視されています。

ここで、LTVとは、ある顧客が、取引を開始してから終了するまでの期間に、自社に対してどれだけ利益をもたらしたか、収益の総額を算出するための指標であり、多くの場合、1人の顧客から生涯にわたって得られる利益の総額を意味します。

現代では、テクノロジーの進化もあって、CRMは理論上の概念で終わることなく、個々の顧客との最適な関係性の構築に大きな貢献をする存在にまでなっています。

また、1990年代に起こった特筆すべきイノベーションは、eコマースの誕生でしょう。
その市場は2000年頃から急速に拡大し、さらに、2010年過ぎまで進んだネット広告の進化によって、ダイレクト広告へのレスポンスから購入までがウェブ上で完結できるようになりました。

2010年以降においては、DSP(Demand Side Platform)やSSP(Supply Side Platform)の登場によって、より効率よく、より自由に媒体の売買を行えるようになっています。
現在では、全ての顧客のデジタル上での行動記録を、デジタル・データで管理できるようになり、顧客になる前から商品購入後まで、すべての段階をデジタル・データで紐付けることを志向しているのが現代のダイレクト・マーケティングなのです。

ダイレクト・マーケティングのメリットとデメリット

ダイレクト・マーケティングのメリットとデメリット

メリット

①ニーズの顕在化している顧客獲得に強い。
ダイレクト・レスポンス広告は、ニーズやウォンツが顕在化している潜在顧客に対してアプローチするマーケティングの手法であるので、この層を刈り取ることに対しては非常に効果を発揮します。特にウェブマーケティングにおけるダイレクト・マーケティングはPDCAを早く回すことができることから、顕在顧客の刈り取りスピードは早いものとなります。

②早く成果を得ることができる。
ダイレクト・マーケティングはニーズやウォンツの顕在化している潜在顧客にアプローチすることから、レスポンスや受注を早期に獲得することができます。

③投資対効果が可視化できる。
ブランド広告と違って、ダイレクト・レスポンス広告は、広告費用とレスポンス数または受注数との間の因果関係がとても強いので、投資対効果を可視化してみることができます。

④精緻なターゲティングができる。
ダイレクト・マーケティングはニーズやウォンツの顕在化したターゲットをキーワードの選定や、リターゲティング広告等を通じて精緻にターゲティングすることが可能です。

⑤複数の広告展開を同時に行える。
ウェブ・マーケティングにおけるダイレクト・レスポンス広告は、ランディング・ページを複数用意することによって、異なるクリエイティブ(広告の構成)を同時に出稿することが可能となります。
新聞折込チラシのようなデジタルではない手法の場合でも、エリアごとに異なるクリエイティブのチラシを複数出稿することが可能になります。

このように複数の広告を同時展開することで、どのクリエイティブに対するレスポンスが良かったかの効果検証(ABテストといいます)を実施することができるので、次回の広告出稿時にはクリエイティブを1つに絞ることができます。

通常は、本番前のトライアルの段階で複数のクリエイティブの新聞折込チラシを出稿してABテストを行い、その結果が最もよかったものを本番で使用するというプロセスを踏むことになります。

⑥PDCAを早く回せる。
ダイレクト・レスポンス広告は、広告出稿後のレスポンスを早く得ることができ、レスポンス数や受注数をデータで入手することが可能であるので、広告の効果検証をすばやく回すことが可能になります。
その結果、次回の広告出稿のクリエイティブやターゲティングの精度の調整を行うことができるので、早期に適切なクリエイティブ等の把握ができることになります。

デメリット

①ターゲットをすぐに狩り尽くしてしまう
ダイレクト・マーケティングは、ニーズやウォンツの顕在化した層にターゲティングしますが、そのボリューム自体は通常1%程度だと言われているように非常に小さいことから、すぐにその層は狩りつくされてしまいます。
したがって、新たにニーズやウォンツの顕在化した層を作り出さなければ、ダイレクト・レスポンス広告を出稿しても、レスポンス率は悪化し、広告の採算が取れなくなります。

②潜在顧客へのアプローチは得意ではない。
したがって、ニーズやウォンツの顕在していない潜在層へアプローチして、ニーズ等を顕在させる必要がありますが、ダイレクト・レスポンス広告は、ニーズやウォンツの顕在化したターゲットを刈り取ることを志向するコミュニケーション手法であるので、ニーズ・ウォンツの顕在化していない潜在層へのアプローチは苦手としています。

このように、ニーズやウォンツが顕在化すように潜在層を育成するプログラム自体はダイレクト・マーケティングの範疇には含まれていないので、その役割は別のプログラムに依拠する他ありません。
そのプログラムとして有効なものが、コンテンツ・マーケティングになります。

③ネットの運用型広告は、人の気持ちを動かす視点が弱い。
ネット運用型の広告は、テクノロジーに依拠する部分がとても多いため、ともすればテクノロジーに依拠しすぎて、人の気持ちを動かすというコミュニケーションの基本を忘れてしまうことに繋がることがとても多いと思われます。
キーワードを選定する際には、そのキーワードで検索する生活者の置かれた環境や文脈をよく考えて、インサイトを深掘りすることは必須であることは肝に銘じましょう。

④短期的視点に陥り、中長期的視点に欠けることがある。
ダイレクト・マーケティングは、測定可能なデータを使って費用対効果を徹底的に追及することを志向するマーケティング手法であるので、目の前の広告に投下した費用と、そこからのレスポンス数や受注数にだけ目が行ってしまい、顧客のLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)を最大化するという、ダイレクト・マーケティングの最終的な目標からは外れてしまうことがあります。

⑤ウェブ・マーケティングでは、差別化が十分でないと価格競争に陥りやすい。
ネット上では、同一カテゴリー商品のスペックや価格の比較が非常に容易にできてしまう時代となりました。
ウェブ上のダイレクト広告を生活者がクリックしてランディング・ページに誘導できたとしても、そこから直線的に購買に至ることはむしろ稀であり、多くは他の広告を参照してスペックや価格比較を行ったうえで、購買の意思決定を行います。

ダイレクト・マーケティングは、ニーズやウォンツの顕在化した層へアプローチするマーケティングであり、生活者の記憶へのアプローチは不要とする手法なので、スペックや価格が購買基準となってしまう可能性がとても高く、商品スペックやブランド力での差別化が行われていない場合には、価格競争に陥りやすくなります。

⑥記憶にアプローチしないので、ブランディングには不向きである。
ダイレクト・マーケティングにおけるコミュニケーション手法であるダイレクト・レスポンス広告の中では、認知から購買まで一気に誘導することが求められます。

したがって、よく知られている消費者購買行動モデルであるAIDMAではなく、M(=Memory:記憶)を取り去ったAIDAモデルを適用すると考えるのがダイレクト・マーケティングです。
広告を見たその瞬間にその場で購入してもらうことを志向するので、記憶してもらう必要性などないわけです。

ダイレクト・マーケティングは、広告を見て「このブランドって素敵だよね~」、「この商品ってクールだよね~」というような良い記憶を植え付けることを志向することがないので、ブランディングには不向きなマーケティング手法であると言えます。

⑦そもそも広告が嫌われている時代に、嫌悪感を抱かれる結果となるいことも多い。
1960年代のワッサー・レンダーマンが提唱して以降、ダイレクト・マーケティングは世界のビジネスを引っ張ってきたことは間違いのない事実です。
ところが情報を取得するインフラやツールが進化を遂げて、かつ、流通情報量が爆発的に増大した現代においては、生活者はもはや受動的に情報を消費する存在ではなくなり、能動的に自ら情報を探索する時代になりました。

そのような大きな環境変化の中では、自分の興味のない情報を送り付けてくる広告そのものに対する嫌悪感を抱くことが、若い世代ほど大きくなっています。
広告とわかった瞬間にスルーされることが多くなった現代では、ダイレクト・レスポンス広告自体が嫌われて見てもらえない時代になってきています。
そのようなことから、ダイレクト・レスポンス広告にブランディングのエッセンスを取り込んだ広告が増えつつあるのも納得がいくところでしょう。

経営環境の変化については、下記の記事を参考にされてください。

ダイレクト・マーケティングの利用事例

ダイレクト・マーケティングの利用事例ダイレクト・マーケティングは幅広い業種で行われており、特に保険や金融、健康食品やサプリメントなどの業界で盛んに行われています。
ここでは2つの事例をご紹介しておきましょう。

セサミンEX(サントリー)

多くの人が新聞のダイレクト広告や、折込チラシのダイレクト広告でご覧になった経験をお持ちではないでしょうか。

自分の健康に対するニーズが顕在している生活者に対して、インサイトをくすぐるようなキャッチコピーによってそのニーズをウォンツへと昇華させ、無料サンプルの提供を通じて本商品の受注へとつなげていく2ステップ・マーケティングの洗練された手法は、ダイレクト・マーケティングを学べる素晴らしい事例でしょう。

時には有名女優を起用して権威性を高めたり、愛用者の声をそのまま使って信頼性を高めたりと、基本の忠実なクリエイティブ作りをしているダイレクト・レスポンス広告になっています。最近では、クイズ形式のコピーを使って、思わず目を止めさせるクリエイティブが使われていますね。

自動車損害保険(チューリッヒ)

自動車の損害保険を販売している多くの保険会社が、「自動車保険なら〇〇〇」というキャッチコピーでダイレクト・レスポンス広告を出稿する中で、チューリッヒは「保険料で選ぶなら」というコピーでレスポンスを取りに行っていました。
気にも留めない方ならこの違いには気付かないかもですが、この差は実はとても大きいのです。

ほとんどの保険会社が「自動車保険なら〇〇〇」というコピーで広告を出稿すると、広告を見た生活者は自動車保険が必要となった時に、このコピーを思い出して検索しますが、多くの保険会社が検索結果に表れる結果となって、価格比較を助長する結果となってしまい、安くなければ選んでもらうことができないという結果に終わります。

一方、他の保険会社と違うコピーを使ったチューリッヒは、「保険料で選ぶなら」を記憶している生活者の検索結果に唯一現れることとなり、そのまま契約へとスムーズに進めてもらうことができます。
もしくは保険料を気にする生活者ならいきなりチューリッヒで指名検索することも多いでしょう。

つまり、ニーズやウォンツの顕在化していない潜在層へのアプローチには、ある言葉で純粋第一想起を得られるかどうかはとても大切なことであり、この考え方は「M=memory」を重視したダイレクト広告ということができ、ブランド広告の要素を併せ持ったダイレクト・マーケティングの事例と言えるのですね。

事業再生におけるダイレクト・マーケティングの役割

事業再生におけるダイレクト・マーケティングの役割事業再生が必要なフェーズにある会社は、できるだけ早期に売上を回復させて収益性を高める必要がありますので、ダイレクト・マーケティングが適用可能な場合には、ダイレクト寄りの施策から開始することも多くなります。
もちろん、業種、商材等によっては、ダイレクト・マーケティングが使えないこともありますが。

中小企業の場合には、社内のスタッフにウェブ広告に精通している方はほぼ皆無ですので、そういう場合には外部のウェブ広告の得意なマーケターをプロジェクトに引き込んで、協業することもやぶさかではありません。

また、新聞折込チラシやDMなどの伝統的なダイレクト・レスポンス広告も従来からよく活用している中小企業は本当に多いのですが、なんとなく作って出しているという企業ばかりで、コピーの詳細な検討やクリエイティブを論理的に構成している企業もほぼありませんので、改善の効果はとても高いのが実情です。

早期に収益力の回復が必要な事業再生のフェーズにある企業には、ダイレクト・マーケティングは必須のマーケティング手法と言えます。

破綻懸念先のランクアップ手法については、下記の記事を参考にされてください。

ダイレクト・マーケティングを学ぶのにお勧めの書籍

ダイレクト・マーケティングを学ぶのにお勧めの書籍①あなたの会社が90日で儲かる!(神田昌典:フォレスト出版:1999/12/14発売)
②60分間企業ダントツ化プロジェクト(神田昌典:ダイヤモンド社:2002/12/7発売)

ダイレクト・マーケティング入門者用の書籍で、神田昌典が世に出るきっかけとなった2冊です。吸い込まれるように一気に読めてしまうと思います。
ヒトの感情に焦点をあてたエモーショナル・マーケティングを提唱していますが、当時広告業界でも主流となりつつあったアカウント・プラニング論(インサイト・マーケティング)をダイレクト・マーケティングに付加して、わかりやすく説明しているものです。
なお、もっとあなたの会社が90日で儲かる!(神田昌典:フォレスト出版:2000/6/1発売)という本もありますが、この本は①の焼き直しなので読む必要はないと思います。

③シュガーマンのマーケティング30の法則(ジョセフ・シュガーマン:フォレスト出版 :2006/3/8)

著者のシュガーマンはアメリカのダイレクト・マーケティングの世界で大きな成功を収めた人物で、カタログ通販やテレビショッピングで売上を左右するのは言葉の力であると断言しています。言葉の遣い方ひとつでセールスの結果は大きく変わるという体験を実務の中で多く持つ著者が、自らの体験談や伝聞から得られるマーケティングの法則を30個のポイントに絞って書かれています。

④新訳 ハイパワー・マーケティング あなたのビジネスを加速させる「力」の見つけ方(ジェイ・エイブラハム:KADOKAWA :2017/10/27)

本書の前書きにもある通り、2001年に「お金をかけずにお金を稼ぐ方法」というタイトルで発売されその後絶版となり、高値で中古本が取引されてきた伝説の本でした。
日本の多くのコンサルタントがこの本から学んだことをベースにクライアントビジネスに向き合ったそうです。
ありがたいことに2016年に内容も一新され装いも新たに再販の運びとなりましたので、ダイレクト・マーケティングの勉強にために読んでおくべきでしょう。

⑤究極のマーケティング・プラン(ダン・ケネディ:東洋経済新報社:2007/3/30)

米国のダイレクト・マーケティング界のグルと呼ばれる大御所の著書。
魅力的な実例やエピソードが豊富にちりばめられているので、読みやすく引きまれ、あっという間に読了させてくれます。
ちなみに監訳者は神田昌典大先生。