USPとは何か?【事実と便益(メリット)に基づく当社独自の価値提案】

USPとはいったい何だろう。マーケティングを考える上ではどうやら大切な概念らしいのだが、よく理解できていないから、その定義や効果や作り方、反対に問題点等もあれば合わせて教えてほしい。

このようなお悩みをお持ちの、学びと実践を大切にする経営者の方はとても多いように思われます。

この記事を読むことで、USPという言葉の定義=本質が良く理解でき、消費者に自社の商品に興味を持って記憶してもらうためには非常に重要な概念であることが理解でき、また、商品やサービスを新しく開発するフェーズでも役に立つことがわかります。

本記事は中堅・中小企業の事業再生に取り組んで20年以上、200社超の再生案件に関与して、マーケティングと管理会計と組織再編の力で再生へと導いてきた、企業再生のプロフェッショナルである公認会計士が書きました。

USPとは何か?

USPとは何か?USPとは、Unique Selling Propositionの頭文字を取った略称であり、簡単に言うと「顧客に対する独自の価値提案」を意味する概念です。
もっとわかりやすく言えば、「自社の製品・サービスのウリ」のことですね。

USPは、1961年にアメリカで出版された「USP:ユニーク・セリング・プロポジション」で、著者であるアメリカ広告界の巨匠であったロッサ―・リーブスによって提唱された概念です。
彼は、1940年代に成功した広告キャンペーンを調べ上げ、とある共通点を見出すことになるのですが、その共通点をまとめたものがUSPに他なりません。

では、USPと言えるための要件は何でしょうか。
この点について、USPの提唱者のロッサ―・リーブスは下記の3つを上げています。

広告は顧客への価値の提案であること

広告は顧客に対して何らかの価値の提案を行うものでなければなりません。
単に自社の製品を礼賛するだけのものであってはならず、その提案にはかならず「顧客にとっての価値」が示されていなければなりません。

価値の提案に独自性があること

顧客への提案は、他の競合が示せない、または示していない独自性を有していることが必要です。
自社にしかできない価値の提案は一体何なのかをハッキリさせて、独自性のある提案をすることが求められます。

価値の提案が強力であること

顧客に提案する価値に独自性があるだけでは十分でなく、その提案が強力であることも求められます。
強力な価値提案とは、顧客の心を強く揺さぶる結果、数百万の人々を動かすことができるくらい魅力的であることを言います。

ちなみにUSPが提唱された時代はマス広告が全盛であり、テレビや新聞などのマス・メディアを使ってマス市場を想定した定義となっています。

以上の3つの要件を満たした価値提案をUSPと呼ぶのです。

つまり、「他社には真似のできない、消費者の気持ちを動かして購買へと駆り立てる当社独自の価値の提案」をもってUSPと呼び、ロッサ―・リーブスは広告はこのUSPを含んだものでないといけないと言っているわけですね。

USPが必要とされる理由

USPが必要とされる理由ロッサ―・リーブスが上掲の書籍を出版したのが1961年で、そこには先にも記載したように、1940年代に成功した広告キャンペーンに共通する要素をまとめ上げた概念であるUSPについて書かれているものです。

1940年代当時のアメリカの経済社会を振り返ってみると、1920年ごろから始まった大量生産・大量消費社会は1929年に起こった世界大恐慌でいったんは頭打ちをしましたが、第2次世界大戦が終結する1945年までの間、戦争の特需によってアメリカ経済は大きく成長し、1939年開戦時に比べて1945年の実質GDPは約88%も伸び、失業率も1.2%にまで低下するという未曽有の好景気を謳歌しました。

このような経済成長を背景にしながらも、1876年にグラハム・ベルによって発明された電話はなかなか普及せず、1920年当時にはその普及率はアメリカ全国平均で40%程度、1940年当時でも50%程度しかありませんでした。
50%といっても、アメリカ全土の平均ですから、その多くはニューヨーク等の大都市に集中し、多くの地方都市などにおける電話の普及率はまだまだ極めて低かったのです。

アメリカのような広大な土地を有する国において、電話の普及率がこの程度しかないということは、ビジネスに対して大きな意味を持ちます。

なぜならば、新聞やテレビで商品の広告を眼にした消費者が、それを欲しいと思っても、すぐに買うことができないわけです。
近所にそれを販売しているお店もなければ、電話も普及していませんから、電話注文もできないわけで、1か月に1回出かける最も近い町へのクルマでのお買い物のついでに買い求めるしか方法がなかったわけです。

つまり、新聞やテレビで広告を目にして、「あら、これは私のための商品だわ!」と消費者が思ったとしても、次に町へ出かけるまでそれを記憶しておかなければならなかったわけです。

1924年に、サミュエル・ローランド・ホールが「Retail Advertising and selling」を著し、かの有名な消費者購買行動モデルのAIDMAを考案しましたが、このAIDMA5つのフェーズの中で、最も重要だとされたフェーズがM=Memory(記憶)であったことは、先に述べた当時のアメリカ社会の状況を勘案すればすぐに理解できることと思います。

都会ではない片田舎に住む多くのアメリカ人に、新商品を新聞やテレビ広告で認知してもらって、その商品に対する欲望を生じさせたら、彼らが次に町へ出かけるまでその商品のことを記憶してもらうことがとても重要なわけです。

そして、商品のことを次に町に出かけるまでに記憶してもらうためには、忘れ去られないように、「他社には真似のできない、消費者の気持ちを動かして購買へと駆り立てる当社独自の価値の提案=USP」を広告において表現することが求められたわけですね。

当時のアメリカの時代背景とインフラの整備状況を考えれば、好景気と低い失業率を背景にした世帯所得の上昇を考えれば、「記憶する=何らかのきっかけで思い出すこと」がとても重要だったことは理解しやすいと思います。

ロッサ―・リーブスがこのUSPなる概念を世に送り出したのは1961年と随分と昔のことなのですが、この概念が現代のビジネスに当てはまらないかというと全くそのようなことはなく、現代においても、広告を見た消費者がその商品やブランドを記憶し、商品の売り場でその広告を見たことを思い出すことは、その商品が購買対象の集合入りを果たすためにはとても重要なわけです。

したがって、USP=Unique Selling Pointという概念は現代のマーケティングの世界でもとても大事なものであって、色褪せてなどいないものなのです。

USPの作り方

USPの作り方USPという概念をロッサ―・リーブスが生み出したのが1961年で、その概念の抽出は1940年代の実際の広告から行っていることもあって、USPの作り方はいたってシンプルです。

つまり、商品に関する重要な事実(Fact)を伝えるか、その事実から生じる便益(Merit)を伝えるかのどちらかになります。
もちろんその伝える内容は自社独自のものであって、他社が言えないものであることは必要です。

事例で説明しましょう。
たとえば、口臭防止剤のリステリンに当時使われていた広告コピーは、ジェラード・ランバートによる“口臭をストップ!”。

現代からすれば、リステリンの類似品も多く出回っており、どの製品も口臭予防に効果があるわけですので、現代において広告にこの“口臭をストップ!”を用いても、なかなか世の中の消費者を購買行動へと駆り立てることは難しいでしょう。

しかし、1940年当時においては、口臭を予防できる商品なんて非常に珍しかったわけで、競合商品もない中であれば、この“口臭をストップ!”という広告コピーは他のどのブランドも言うことができないですし、世の中の口臭に悩んだり、気にしたりしている消費者の多くが、この商品を記憶にとどめ、店頭で購買へと駆り立てられたことは容易に想像できます。

この広告コピーは、何を伝えているかと言えば、リステリンを使うことによって得られる便益(Merit)です。

そしてその便益(Merit)が生まれるのは、リステリンが原料としてシネオール(ユーカリにも含まれている成分で、強い殺菌・防腐作用がある)とチモール(芳香性のにおいと刺激的な味を持つ殺菌剤で歯科治療でも広く用いられている)を使っているという客観的な事実(Fact)があるからです。

また、たとえば、クロード・ホプキンスによる某ビール・ブランドの広告コピーは、“わが社のボトルは生蒸気で洗浄されています!”でした。
このUSPによってこのビール・ブランドは業界5位から業界トップへとシェアを大幅に伸ばしました。

クロード・ホプキンスがビール工場を見学した際に目に入ってくる情報は知らないことばかりで、ビールが詰められる前に、そのボトルが高温の蒸気で洗浄されている光景には大変驚き、この事実をUSPとして取り上げることを決めたのでした。

この広告コピーは、何を伝えているかと言えば、ビール工場での1つの工程に関する事実(Fact)そのものであり、その先にある便益(Merit)まで伝えているものではありません。

しかし、この事実を伝えるだけで消費者は連想の働きによってその先にある便益(Merit)はしっかりと認識できるのです。
つまり、「ボトルが生蒸気で洗浄されている」という事実(Fact)から、「清潔で安心して飲めるビール」という便益(Merit)が容易に連想されるのです。

また、本事例のように、便益(Merit)を直接伝えるよりも、世の中の消費者のほとんどが知らない事実を伝えてあげるほうが、情報の受け手である消費者からすれば、「これまで知らなかった新しい知識」を驚きを持って受け止めることになって記憶に残りやすいという効果を持つことになります。

さて、ここで、ビールを詰める前に高温の蒸気で洗浄するという工程は、他の競合先を含めた業界すべての工場で実施されている標準的な工程であり、USP1つの要件である「他の競合ブランドが言えない独自性」の観点からすれば、全く独自性などないではないかという批判があろうかと思います。

つまり、業界の標準的な工程であれば、他の競合ブランドだって言えてしまうわけで、そうであれば全く独自性などないと言えるだろうというわけです。

しかしながら、どの競合先でも言えるようなことであっても、先に言ってしまえば、後から同じUSPを声高に叫んだとしても、後追いで同じことを訴求するブランドに対して「模倣品」というブランド価値を下げることにもなりかねないレッテルを貼られるリスクもあって、実質的には後から言えるものでもないのです。

つまりは、先に言ってしまえば、その内容はそのブランドでしか言えない独自性をまとうことになるのですね。

以上、2つの事例(便益(Merit)を訴求するケース、事実(Fact)を訴求するケース)をあげました。

上記の説明からご理解いただけるように、どちらも客観的な事実(Fact)を基礎にして、その事実(Fact)をそのまま伝えるか、そこから生まれ出てくる便益(Merit)を伝えるのかのどちらかであるということです。
いずれの場合も事実(Fact)を基礎にしていますので、伝える内容の客観性・確実性は担保されていることとなって、ブランドの信頼性にも繋がりやすくなるということができます。

ロッサ―・リーブスがUSPという概念を提唱した当時にはすでに、心理学を基礎としたコミュニケーションも使われ出していましたが、彼は著書の中で、そういった新しい広告コピーの作り方に対して、『・・・・・「フロイト的コンプレックス」、「隠れた動機付け」、「潜在意識の説得」、「深層心理テスト」、「分析プロファイル」・・・・・こうしたブードゥー教の太鼓が連日1,000卓もの会議テーブルで響き渡れば、頭も混乱するというものだ。それでいて、これらがきちんと定義されることはほとんどない・・・』として一蹴しています。

まだ、心理学や脳科学の研究も現在ほど進んではいない時代であったので、そのような科学的ではないものに基礎を置くコミュニケーション手法を使うことはできなかったという時代背景が、USPを商品に関わる事実(Fact)とそこなら生まれる便益(Merit)に限定されたことも十分に納得のいくことでしょう。

USPの現代的問題点

USPの現代的問題点ロッサ―・リーブスが活躍した時代であれば、新しい機能を持った商品が颯爽と登場すれば、消費者は驚きと喜びをもってそれらの新しい機能を歓迎し、事実(Fact)や便益(Merit)を伝えておけば、記憶に残し、売り場で想起して買ってもらうことが十分に可能でした。

ところが、現代のようなあらゆるカテゴリーの商品やサービスの市場が成熟化し、各ブランド間で機能的な差異はほとんどなく、機能に基づく、つまりは便益に基づく訴求を行っても独自性などほぼなきに等しい状況になっています。

したがって、ロッサ―・リーブス流に事実(Fact)と便益(Merit)のどちらかであるUSPを訴求しようとしても、そもそもUSPの要件である独自性を担保することができなくなっています。つまり、現代では伝統的なUSPを伝えても消費者にはもはや振り返ってはもらえないというケースも多くなっているのです。

一方、ロッサ―・リーブスが著書の中で一蹴していた心理学や脳科学に基づいたコミュニケーション方法については、心理学や脳科学の目覚ましい発展によって、1990年頃から次第に多く用いられるようになってきました。

生活者が普段の生活の中でどんな気持ちで生活しているのか、当社の製品やサービスのカテゴリーに対してどんな気持ちを持っているのかを洞察して、自社ブランドであればその気持ちどのように寄り添うことができるのかを提案するインサイト・マーケティングです。

消費者インサイトの詳細については下記の記事を参考になさってください。

ニーズとウォンツの詳細については下記の記事を参考になさってください。

たとえば、ロッサ―・リーブスがその著書の中でUSPの事例としてあげており、先に紹介したリステリンの“口臭をストップ!”をインサイトを用いた表現に変えるのであれば、リステリンの利用する消費者の中から、「恋愛中の女性」をターゲットにして、その女性に向けて、“デート前の新しい習慣です!”と言ってあげれば、彼女たちの深層心理に潜む『好きな人の前では清潔さをアピールしたい』というインサイトを押すことになって、ターゲット女性は思わずリステリンを買ってしまうことになるわけです。

ロッサ―・リーブスはこういった心理学に基づくアプローチ方法を毛嫌いしていましたが、現代では当時よりも心理学や脳科学が発達したおかげで、その知見に支えられながら、豊かな表現方法が生み出されています。

また、提供する商品やサービスから離れて、そのブランドの世界観を広告コピーに用いるということも普通に行われるようになってきました。
この方法も、ロッサ―・リーブスの時代にはなかったブランドに対する知見の蓄積が現代では相当進んでいることから可能になったものです。

たとえば、サントリーの缶コーヒーブランド『BOSS』であれば、このろくでもないすばらしき世界”と訴えて、いいことも悪いこともあるこの世界に寄り添うコーヒーを提供するというブランドとしての志向を消費者に伝えることで共感を獲得し、購買にまで繋げています。

アップルは、“Think Different”と訴えて、人とは違うことをする人を応援するブランドとして、世界的に支持を受けるブランドに成長しました。

このように、製品の機能などからは離れ、ブランドの志向性を伝えて、いいなと思ってもらう手法も現代ではとても大事なコミュニケーション手法となっています。
こういったブランドの持つ世界観を伝えることで、独自性は必ず担保されることになります。
世界に同じ世界観を持つブランドなどない訳ですから。

USPの事例

USPの事例ドミノ・ピザ

ドミノ・ピザまず、USPの事例として取り上げられることの多いドミノ・ピザについて説明をしておきましょう。
そのUSPは下記のとおりです。

熱々で美味しいピザをお宅まで30分以内にお届けします。間に合わなければ、代金はいただきません。

ここで伝えられているのは、「30分以内に熱々の美味しいピザを届ける」ということと、「間に合わなければ、無料にします」という2つの便益(Merit)です。

どちらも、便益(Merit)を伝えていることになり、前半が「熱々の美味しいピザを30分以内に届けてもらえる」という便益(Merit)を、後半が「万が一30分を超えたら無料になる」という便益(Merit)を伝えています。

こういった短時間でのデリバリーを可能にしたのは、ピザを早く焼くことができるオーブンが開発されたという事実(Fact)、出来上がったピザを早く届けることができるだけのデリバリースタッフの配達経路等の習得という事実(Fact)があったわけです。

現代からすれば、30分以内に熱々のピザが宅配してもらえることは当たり前のことのように感じられますが、このUSPができた当時は、「注文から配達まではかなりの時間がかかる」というのが宅配ピザ業界の常識で、中にはすっかり冷えたピザを食べさせられているお客さんもありました。

そんな業界の常識に対して、「30分以内での配達と、30分を超えた場合には無料にする」と強烈な競合他社がまねできないUSPを打ち出したことで、1960年に、アメリカのミシガン州イプシランティにオープンした「ドミニック」という小さなピザショップが、いまでは、アメリカ国内にとどまらず、アジア、ヨーロッパ、オーストラリアなど世界50ヶ国に7,000店舗以上を展開する一大チェーンに成長しています。

M&M’s

M&M's子供の頃は誰もがお世話になったチョコレート・ブランドのM&MsUSPは、下記のとおりです。

“お口でとろけて、手にとけない”

当時世の中のチョコレートは夏場などに気温が高くなるとどうしても溶けてしまい、封を破っただけでチョコレートが流れ出して手を汚してしまいました。
また、封を切った段階で溶けていなくても手に持つだけで体温に反応して溶けだして手を汚してしまっていました。

そんな中で開発されたM&Msはチョコレートを砂糖菓子でコーディングしその上から様々な色で着色していることから、手で持っただけでは溶けることはありません。
手を汚さずに美味しく食べる唯一のチョコレートがM&Msだったのです。

そんな画期的なチョコレート製品を開発したことから、広告コミュニケーションもその独自の機能を表現すれば足ったのですね。

最終的に、伝えたのは便益(Merit)ではなく、そのもととなっている事実(Fact)でした。

「お口でとける」も「手にとけない」も単に事実を伝えているだけなのですが、その事実(Fact)はチョコレートにとっては画期的な新しいことだったので、「チョコを食べた後に手を洗わなく済む」などの便益(Merit)を伝えることなく、ストレートに事実(Fact)を伝えたのです。

案の定、市場からは驚きと称賛で迎えられ、M&Msは大ヒット商品になりました。

稲葉製作所

稲葉製作所1987年にテレビCMを開始して以降、一度も訴求内容を変更していない稲葉製作所が製造販売するイナバ物置のUSPは下記の通りです。

 “100人乗っても大丈夫”

稲葉製作所が製造する「イナバ物置」は、屋根を支えている母屋中という部材に厚い鉄板を用いた堅牢な製品で、荷重試験のみならず、雨水侵入試験など厳しい耐性試験をパスしています。

この広告コピーが伝えているのも、事実(Fact)に他なりませんが、この事実(Fact)を伝えれば、この物置から得られる便益(Merit)は各自が連想できます。
北海道東北に住む人であれば、冬に豪雪になっても安心できるなどの便益(Merit)につながるでしょうし、沖縄の人ならば、台風の季節に庭の木がなぎ倒されて物置の上に倒れたとしてもびくともしないなどの便益(Merit)につながるでしょう。

クリエイティブとしては、頑丈さを表現するのに、実際に100人の人が物置の屋根に乗って、その頑丈さを視覚で表現する手法が取られており、より一層その便益(Merit)が強く記憶に刷り込まれる結果となっています。
ちなみに屋根に乗っている100人は、稲葉製作所の社長と、成績優秀な代理店の社長だそうです。

USPとコンセプトの異同点

USPとコンセプトの異同点USPと区別することが難しい概念にコンセプトがあります。

コンセプトは様々なレイヤーで使われる言葉で、事業コンセプト、商品・サービスコンセプト、デザイン・コンセプト等々、いろいろな名詞にくっつけて使われます。
コンセプトは、マーケティングでは「誰にどのような(新しい)価値を提供するのか」という意味を持つ言葉で、ターゲットと提供価値という2つの要素含んだ概念になります。
コンセプトという言葉の原義を辿ると、「新しい」という意味を含んだ言葉ですので、提供する価値には新しさが必要ということになります。

コンセプトの詳細については下記の記事を参考になさってください。

USP(=Unique Selling Proposition)は、「他社には真似のできない、消費者の気持ちを動かして購買へと駆り立てる当社独自の価値の提案」であり、一方コンセプトは「誰に対してどのような(新しい)価値を提供するか」ですので、両者は大方一致することが多いと思われます。

「価値」という言葉が双方の意味として入り込んできますが、そもそも「価値」とは「特定の人」を前提として成立する言葉ですので、USPにもすでにターゲットを絞り込むということは暗黙の裡に含意されています。

コンセプトもUSPも提供する価値についての言明である点は共通しますが、これら2つの概念が各々カバーできる価値の範囲が異なります。

USPは、先にも書いたように、事実(Fact)か、または、そこから生じる便益(Merit)のいずれかを用いて表現しますが、コンセプトはこういった客観性を満たす事実(Fact)やそこから生じる便益(Merit)を超えた、主観的な人の気持ちを扱う価値をも含むことができます。

つまり、USPは機能、品質、用途などの実利的な価値を対象とする概念であるのに対して、コンセプトは、実利的価値以外に、人の主観的な気持ちを表す情緒的な価値までも含意する概念であるという点で大きく異なるわけです。

USPと事業再生

USPと事業再生現代において、事業再生のフェーズに落ち込んでしまった中小企業の多くは、売上低迷が原因となって営業キャッシュフローでは有利子負債の返済原資が賄えないような案件が大半を占めます。
そして、なぜ売上の低迷が継続するのかと言えば、自分の経験に照らせば、提供している商品やサービスの提供価値(コンセプト)が、顧客ニーズとの間に乖離が生じてしまったためであることがとても多いように思います。

先代の時代に開発された商品で、当時は顧客のニーズとぴったりと合うコンセプトであったものが、顧客の世代交代によって、新しい世代の持つニーズを掴み切れないまま、世の中のニーズとコンセプトにズレが生じてしまっているようなケースですね。

先代の時代には商品の持つUSPが機能して、そのウリをチラシ等でコミュニケーションすれば、顧客を購買へと誘うこともできたのでしょうが、先代の時代から受け継いだ商品のUSPはもはやウリなどではなくなっているわけです。
つまり、先代の頃はスペックで競争することができた時代だったわけですが、似たようなスペックを持つ競合商品であふれ返っている現代の市場では、USPだけで生活者に選んでもらうことなどほぼ不可能になっているわけですね。

USPオンリーでコミュニケーションを行っても選んでもらえる可能性が低いのが現代の市場環境です。
USP
以外を使ったコミュニケーションを考えることは中小企業であってもとても大切なことですし、事業再生のフェーズに落ち込んでいる中小企業は、機能や品質などの実利的価値が競合先と比較しても見劣りしないかを検討した上で、既存商品のコンセプトを、USPを超えた広い観点から見直してみることが必要になります。

時代が大きく変わりつつあるだけでなく、顧客も、顧客のニーズも大きく変わりつつある時代です。
先代からそのまま事業を継承するだけでなく、変えるべきところは変えるという信念のもと、家業に取り組むべきでしょう。

事業再生は中小企業でも取り組めるのか?については、下記の記事を参考になさってください。

中小企業が事業再生を成功させるポイントについては、下記の記事を参考になさってください。

事業再生を相談するべき専門家の選び方については、下記の記事を参考になさってください。