セールス・プロモーションとは何か?【定義、効果から事例まで】

セールス・プロモーションってときどき耳にする言葉だし、自分もよく遣っている言葉だけれども、よく考えたら、この言葉の意味って正確に理解していないな。
いったい、セールス・プロモーションの意味するところは何なのだろう。
どういうものをさしてセールス・プロモーションと呼び、そして、それを実施するとどんなメリットやデメリットがあるのかも合わせて教えてほしい。

セールス・プロモーションに関してこのようなお悩みをお持ちの、学びと実践を大切にする経営者の方はとても多いように思われます。

この記事を読むことで、セールス・プロモーションという言葉の定義=本質が良く理解でき、ビジネスの現場でお客様に買っていただく最後の一押しを的確に実施することができたり、自社のブランドに良い影響を与える具体的な施策とはどんなものかが理解できるようになります。

本記事は中堅・中小企業の事業再生に取り組んで20年以上、200社超の再生案件に関与して、マーケティングと管理会計と組織再編の力で再生へと導いてきた、企業再生のプロフェッショナルである公認会計士が書きました。

セールス・プロモーションとは何か?

セールス・プロモーションとは何か?セールス・プロモーションとは、値引き、プレミアム、特別陳列、サンプリングなどの手法を用いて、消費者の購買行動を直接的に引き起こし、売上を短期即効的に獲得することを可能とするマーケティング手段の総称です。

それを実施することによって、消費者のベネフィットかコストのどちらか(もしくは両方)に働きかけることにより、モノの価値を一時的に高めることができるということが、セールス・プロモーションの本質になります。

たとえば、値引きを実施することで、消費者のコスト負担は減少し、購買対象であるモノやサービスの価値が一定で不変だとすれば、消費者の享受する価値は一時的に高まることになります。
また、プレミアム手法を用いて、何らかのおまけが付いてくる場合には、消費者のお得感は増大することになって享受する価値が一時的に高まることになります。

このように、セールス・プロモーションは様々な手法を用いて、消費者の享受する価値を一時的に高めることで、売上を短期的に増加させるマーケティング手法なのです。

セールス・プロモーションの種類

セールス・プロモーションの種類セールス・プロモーションの対象を誰にするかによって、その種類は大きく3つに分けることができます。

第1に、一般消費者に向けて行うセールス・プロモーションがあります。

これは、主に小売業者等の流通業者を介して、値引きを実施したりプレミアム(おまけ)を付けたり、もしくは潜在顧客に試用を促すことでブランド体験を生じさせたりするなどの様々な手段を講じることで購入意向を促すものを指します。

街頭で試供品を配布して使用体験を促すサンプリング(製品の試用)、スーパーでよく見かける新製品の試食などのデモンストレーション(実演販売)、POP等を利用した店頭ディスプレイやイベントなど多種多様なものがあります。

第2に、流通チャネル向けに実施するセールス・プロモーションがあります。

これは、卸売業者や小売業者へのインセンティブそのものであり、具体的には、販売数量に応じて報奨金を出すことが一般的な手法となりますが、報奨金以外にも、報奨旅行や、バックリベートなどがあります。

こういった流通チャネル向けのセールス・プロモーションは、消費者の目には見えないことが多いため、世の中からは目につきにくくなっていますが、販売の現場では日々実施されているものになります。

第3に、社内向けセールス・プロモーションがあります。

これは、営業部隊の販売に対する意識付けを高めることを目的にしたり、営業部隊は販売部隊の営業・販売スキルの向上を狙って行われるものです。
具体的には、営業という属人的な仕事に方法論を伝えるためのセールス・マニュアルの作成や、販売スキルの向上を企図した販売コンテストの実施などがあります。

セールス・プロモ―ションと消費者購買行動モデルとの関係

セールス・プロモ―ションと消費者購買行動モデルとの関係マーケティング・ミックスの4Pのうちの1つである販売促進には、広告宣伝、広報・PR、人的販売、セールス・プロモーションの4つが含まれますが、販売促進と消費者購買行動モデルとの関係は下記に記載のとおりとなります。

セールス・プロモーションと消費者購買行動モデルとの関係ここでは、消費者購買行動モデルとして、日本では最もなじみが深いAIDMAモデルを採用しています。

この図を見れば理解できると思いますが、広告宣伝や広報・PRは認知から記憶までをカバーし、消費者の気持ちを動かすことはできますが、最後の購買行動まで一気に持ち込むことはかなりハードルが高いものになります。

商品やサービスの存在を知って、興味関心を持ち、欲望に繋げて、記憶に留めて店頭まで来させることはできますが、最後に店頭で購買に至らせるには、「最後の一押し」が必要なわけで、この役割を担うのが人的販売やセールス・プロモーションになるのです。

もっとも、最近では、インターネットやSNSによるコミュニケーションが当たり前になっている時代ですので、こういったコミュニケーション・ツールを用いることで、セールス・プロモーションが「店頭での最後の一押し」にとどまることなく、認知を獲得する役割を果たすことも可能になっており、セールス・プロモーションがマーケティングで果たすべき役割が非常に広範なものとなってきていることが理解できるでしょう。

マーケティング・ミックス(4P)については、下記の記事を参考になさってください。

セールス・プロモーションの重要性が増している理由

セールス・プロモーションの重要性が増している理由昨今ではセールス・プロモーションがマーケティングで果たす役割が非常に広範になっていることは先に述べたとおりですが、近年ではその重要性も高まりつつあります。

成熟市場でモノが売れない

日本は世界的に稀に見る成熟市場であり、あらゆる製品カテゴリーで高品質・低価格が進んでおり、消費者の購買意欲を刺激するようなイノベーティブな商品が生まれにくくなっています。

また、いまだに猛威を振るうコロナ禍において消費意欲の減退が招いている不況の中では、さらにモノが売れない状況が続いているような状況です。

このように、構造的にモノが売れない状況が続くと、店頭での「最後の一押し」を担う役割を果たしてきたセールス・プロモーションへの期待感は一層高くならざるを得ず、さらには、SNS等の新しいコミュニケーション・ツールを使った認知の獲得までセールス・プロモーションへ期待する風潮も高まっています。

経営環境の変化については、下記の記事を参考になさってください。

広告がスルーされる時代

わが国では2005年に始まったと言われる情報大爆発によって流通情報量が爆発的に増大した結果、現代を生きる我々消費者は、自分に関係のない情報は基本的にスルーするようになってきました。
すべての情報を処理していたのでは脳内キャパシティがどれだけあっても足りないことから、生物学的も自己防御的に我々は情報をスルーし、自分にとって有用な情報のみを消費することが普通になりました。

その結果、自分の時間に割り込んで売りつけてくる広告を無意識のうちに避けるようになって、自分に関係のない情報を持った広告はスルーするようになりました。
つまりは広告が効かない時代が到来したのです。

このような広告が効かない時代においては、情報の客観性が高く信頼性が高いPRによってもたらされる情報が選択されやすくなったり、SNSをぼんやり眺めている時に流れてくる友人知人のシェアした情報には関心を持つようになっています。

このようなことを背景にして、ウェブサイトやSNSを用いて、広告に変わって認知を取るという新たなセールス・プロモーションの役割が期待されるようになっています。

価格訴求が効かなくなりつつある

日本のような成熟した市場では、ほとんどのカテゴリーにおいて「安い」のは当たり前で、「安くて良いもの」でなくては売れない時代であり、価格訴求そのものはすでに限界を迎えているといっても過言ではありません。

同じカテゴリーで競争する競合の商品も高品質でリーズナブルな価格のモノばかりで、ちょっとやそっとの値引きでは消費者は振り向いてくれなくなっているのが現代なのです。

したがって、販売効果を押し上げるためには、商品企画力(コンセプト立案力)が非常に重要な要素となっていますが、中小企業の商品企画力は総じて弱く、コンセプトで差別化を図ることはなかなか難しい状況です。

このような中では、商品企画力(コンセプト立案力)以外で販売効果にインパクトを与えるものがセールス・プロモーションであり、したがってそこに対する期待は年々大きくなるばかりです。

新しいメディア対応の必要性

テレビ、新聞、雑誌、ラジオという4マス媒体の広告効果が大きく低下している中で、SNS等の利用者急増を背景にして、企業がこれらの新メディアを情報伝達チャネル、つまりは認知を取るチャネルとしてとして利用する必要性が高まっています。

若者を中心にもはやコミュニケーションのための社会インフラにまで成長したSNSを使ったセールス・プロモーションの可能性は非常に大きく、日々様々なアイデアで認知から購買までを一気通貫で結ぶ企画が生まれ続けているのです。

セールス・プロモーションと広告宣伝の違い

セールス・プロモーションと広告宣伝の違いセールス・プロモーションも広告宣伝も、マーケティング・ミクスの4Pの中の販売促進の中の1つの要素である点では共通していますが、先ほど見た消費者購買行動モデルに当てはめた時の役割がそもそも違うことから、その機能にも大きな差異があり、以下の4つの点で大きく異なっています。

手段の多様性

広告宣伝は、手段としての広告媒体はテレビ・新聞・雑誌・ラジオの4媒体に限定されますが、セールス・プロモーションはサンプリングのように手軽に製品の試用体験を促す手段もあれば、懸賞キャンペーンのようにプレミアムなどの獲得機会を与え商品等の価値を高める方法もあり、手段が非常に多様であるという大きな違いがあります。

短期的な効果

広告宣伝は、その字義どおり、情報を広く知らしめて、認知⇒興味関心を取り、記憶に留めることをその本来的な役割としますが、広告を見たその場ですぐに購買行動を起こすことはできず、認知から購買行動までタイムラグがあるのが普通です。

これに対してセールス・プロモーションは販売の現場での「最後の一押し」が基本的な役割であり、即時的な購買を喚起できるものであり、消費者に直接働きかけて一時的な価値の向上を図り、結果、購買行動を生起させることが可能なものです。

測定可能性

広告宣伝は、認知や態度変容といった、消費者の心の内の変化でその効果を捉えざるを得ず、測定可能性は非常に低いと言わざるを得ません。

これに対してセールス・プロモーションでは、行動レベルで可視化された効果が現れるので、効果測定が比較的容易であり、特にデジタル・マーケティングの世界では、購買プロセスの各々のフェーズでの離脱数を数値で客観的に捕捉することが可能となっています。

到達可能性

広告宣伝では、広告で自社ブランドの既存ユーザーのリピート購買を狙って、彼らにだけメッセージを届けようとしてもそれは非常に難しく、そのハードルは極めて高いと言わざるを得ません。

一方で、セールス・プロモーションは、情報を到達させること、つまりは、設定したターゲットを狙い撃ちして直接的に働きかけることが可能なのです。

セールス・プロモーションの量的効果と質的効果

セールス・プロモーションの量的効果と質的効果セールス・プロモーションを実施することによって得られる効果には、量的効果と質的効果とがあります。

量的効果

量的効果とは、消費者がセールス・プロモーションの影響を受けて、どれだけ購入するのかという購買量に関する効果をいいます。

たとえば、値引きされていた缶ビールを大量買いして冷蔵庫にストックした後に、それまでは晩酌に缶ビール1本だけ飲んでいた人が、毎日3本の缶ビールを飲むようになるなどの消費パターンが変化した場合には、値引きという価格プロモーションの量的効果があったということがいえます。

また、焼酎で晩酌することが日課だった消費者が、値引き販売されていた発泡酒に目が留まり、買ってみたところとても美味しく感じたので、焼酎から発泡酒に乗り換えるなどのカテゴリー・スイッチも量的効果の事例になります。

質的効果

質的効果とは、セールス・プロモーションの実施がブランド価値に影響を与えることをいいます。

これまでの様々な研究によれば、価格プロモーションはブランド価値を低下させることが分かっています。

値引きによって一時的に価格を切り下げることで、消費者の感じる価値は高まりますので短期的な売上の増大には貢献しますが、価格の切り下げがブランドを安っぽく見せることにつながってしまい、ブランド価値は低下することになります。

また、質的効果ではありませんが、頻繁に値引きを実施すると、消費者のその商品の内的参照価格の引き下げという事態を招くことになって、いずれ定価では買ってもらえなくなるという大きなデメリットを生じさせる結果となります。

セールス・プロモーションすべてが価格プロモーションのようにブランド価値の低下を招くのかというとそういうわけではなく、例えばプレミアムを使ったキャンペーンなどは、一般的にブランド価値を逆に高めることになります。

仮に、缶コーヒーを販売している飲料ブランドが、その缶コーヒーについて「アウターのプレゼント・キャンペーン」を実施するとします。
その缶コーヒーブランド纏っているイメージが「ブルーワーカーのための缶コーヒー」だったとすれば、キャンペーンで準備するアウターは、「紺色のステンカラーコート」などではなく、「ドカジャン」であるべきでしょう。

この時、プレゼントされるアウターが「ドカジャン」であるならば、この缶コーヒーが纏っている世界観とプレゼントされるプレミアム(景品)が強い連想で繋がるため、この缶コーヒーブランドの想起率は高まることになって、ブランド価値は高まることになります。

一方、プレゼントされるプレミアム(景品)が「紺色のステンカラーコート」であるならば、この缶コーヒーの纏っている世界観と景品との一体性がないため、ブランド価値の低下を招く結果となってしまうでしょう。

量的効果と質的効果

以上のように、セールス・プロモーションを実施する場合には、販売量がどのように変化するのか、その変化にはカテゴリー・スイッチやブランド・スイッチが見込めるのかという量的効果と、自社ブランドのブランド価値にどのような影響を与えるのかという質的効果の双方を勘案する必要があります。

世の中で多く行われているセールス・プロモーションの中には、単に短期的な売上増を企図しているだけのものが多いように思われますが、そのような施策の実施は中長期的にはブランドを棄損することにも繋がりますので、注意が必要です。

セールス・プロモーションのメリットとデメリット

セールス・プロモーションのメリットとデメリット

メリット

第1に、セールス・プロモーションは顧客価値を一時的に押し上げる効果を持つので、短期的な売上増加に貢献するという点が挙げられます。
足元の資金繰りが厳しくてとにかく現金を確保したい時などは、在庫を現金化する良い機会になりえます。

第2に、セールス・プロモーション企画時に顧客の買い場におけるインサイトを考えることになるので、そのインサイト仮説の正しさを実証する良い機会となりえます。
そこで得られた顧客に関する知見はブランドや店舗の大きな知見となって今後の施策に生かすことができます。

第3に、価格以外のプロモーションを実施することで、ブランド価値を高めることができ、当該ブランドの想起率(純粋想起または助成想起)を高めることが可能になります。

低関与品(最寄り品)であれば、助成想起が、高関与品(買い回り品)であれば純粋想起が重要であるとされますが、非価格のセールス・プロモーションを上手に実施することで、こういった想起率に良い影響を与えることができ、何らかの情報をきっかけにして「思い出してもらう」確率を高めることが可能になります。

デメリット

第1に、価格プロモーション(値引き)を実施する場合には、ブランド価値の低下を招くという中長期的には大きなダメージを覚悟しなければならないということ、また、値引きを繰り返していると、消費者のその商品に対する内的参照価格が引き下げられることになって、定価販売では買ってもらいにくくなるという大きなデメリットが生じます。

価格プロモーションには、短期的に売上増加が見込めるという麻薬のような効果があるので、何度も繰り返してしまいがちですが、上記のような大きなデメリットが存在しますので、価格プロモーションに使う原資を、EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)に使ったほうが収益性は大きく高まります。

第2に、非価格プロモーションであっても、ブランド価値を低下させる可能性があるということです。

せっかく、コストをかけてセールス・プロモーションを実施しても、ブランド価値を低下させてしまっては元も子もありません。
先ほども書いたように、非価格プロモーションを実施する場合には、その施策がブランド価値に対してどのような影響を与えるのかをしっかりと勘案することが大切です。

第3に、提供している商品やサービスが世の中の競合品と比較して基本的な機能面において大きく劣っている場合には、セールス・プロモーションを実施することで悪評が広まる結果となって、短期的な売上は上がるものの、施策実施以降の売上が大きく落ち込む結果になることがありえます。

施策実施前にはそのような基本的機能における競合品との比較はしっかり行って、万が一、大きく劣ることが判明した場合には、セールス・プロモーションなど実施する前に、商品やサービスの基本的機能の改善を行うべきでしょう。

セールス・プロモーションの企画立案上のポイント

セールス・プロモーションの企画立案上の注意点

セールス・プロモーションは、マーケティング・ミックスの1つである販売促進の中の1つの要素であるという性格上、マーケティング基本戦略であるSTPの流れを受けて立案されるのが通例です。
したがって、マーケティング基本戦略上のポイントはここでは書くことはせずに、セールス・プロモーション独自のポイントに限って記載することにします。

マーケティングン戦略の立て方については、下記の記事を参考になさってください。

実施する目的を明確にする

先ほども記載したように、セールス・プロモーションの役割は多岐に渡り、現代では認知の獲得から売り場での最後の一押しまで影響を与えることが可能です。

だからといって消費者購買行動プロセスの全てに影響を与えることができるようなセールス・プロモーションはあり得ませんから、影響を与えるべきプロセスを絞って、プロモーションの目的を明確にする必要があります。

商品やサービスの認知度が低いので、そこに焦点を絞って、認知度向上を目的にすることもできますし、買い場を改善して最後の一押しでお客様に納得してもらって購買に繋げることを目的にするのか等々、様々な目的が考えられますが、とにかく顧客の購買行動プロセスの中のどこに焦点を絞るのかを明確にすることが大きなポイントになります。

時間とお金をかけてプロモーションを行えば、短期的な売上の確保には繋がるでしょうが、売上以外の目的が達成できなければ、全体のマーケティング戦略も大きく狂いが生じることとなってしまいます。

見込客のインサイトを考える

ターゲットとした顧客層がどのようなインサイトを抱えているのかについては、セールス・プロモーションを実施する際にはすでに検討済みだと思われます。
しかしながら、実施するセールス・プロモーションが買い場そのもので行うものであるならば、買い場特有のインサイトを別途考える必要があります。

また、買い場以外で実施する施策である場合でも、見込客のインサイトを洞察しないことには、最初設定したセールス・プロモーションの目的を達成することも、短期的な売上増加を果たすことも難しくなります。

マーケティングの各フェーズで現れてくるインサイトは常に意識するように心がけることが大きなポイントです。

消費者インサイトについては、下記の記事を参考になさってください。

インサイトと整合する価値提案を意識する

セールス・プロモーションでは、サンプリング(試供品)、買い場でのPOP広告、Webサイト、SNSなど、さまざまな販促ツールを活用して、顧客を直接的に購買行動へと誘引します。

どの販促ツールを使うかは、顧客のインサイトをベースにして、そのインサイトに寄り添える提案を最も効率よく実現できるかどうかという視点で判断することが必要です。
そして、そのインサイトのもっとも寄り添える価値提案をお客様に訴求するには、どういった販促ツールがベストなのかという順番で思考することがポイントになります。
あくまで顧客のインサイト主導で用いる販促ツールを決定するなど、具体的な施策を企画するべきであり、手口ありきのプロモーションでは効果など期待できないということです。

PDCAを回す

セールス・プロモーションでは、短期的な売上増加を企図することだけが目的となってしまって、中長期的な視点で持続的な業績向上を図るという視点が抜け落ちてしまうことが少なくありません。

セールス・プロモーションを実施して売上の増加だけを確認するだけではなく、当初企図した目的が達成されているのか、達成されなかった原因はどこにあるのかの検討は必ず実施するようにしましょう。

そこから得られた知見をフィードバックして次回のセールス・プロモーションの企画立案に生かすことは、中長期的な業績向上にとってはとても大切なことです。

キャンペーン実施後にアンケートを実施して、顧客の声を聴いたりすることも大切ですし、ECサイトを絡めたキャンペーンの場合には、商品を購入した顧客に、商品の使用感などの感想を聞いて、商品や販促施策の改善につなげることが可能です。

セールス・プロモーションの事例

セールス・プロモーションの事例ここでは、味の素が2010年から展開したリブランディング事例の「つけパンひたパン (クノール カップスープ) 」の秀逸なセールス・プロモーション事例をご紹介しましょう。

味の素がライセンス生産・販売を行っている「クノール」の主力製品であるクノール・カップスープは、1973年に日本初のインスタント・スープとして発売され、手軽に美味しいスープが楽しめることから、長きに渡って愛されています。
ブランド認知度もほぼ100%であり、スープ・カテゴリーを代表するロングセラーブランドといえますね。

順風満帆に見えるこのブランドも、幾多の停滞期があり、特に、1990年代末における、スープ・カテゴリーからドリンク・カテゴリーへのこのポジショニング転換は、消費者に受け入れられずに売上は大きくダウンするという苦渋を舐めています。

インスタント・スープを紅茶やコーヒーのように、より身近な手軽なものとして、さらには、朝だけに摂取機会を限定するのではなく、様々な場面で飲んでもらえれば新たな成長機会が実現するはずだと考えて、スープのとろみを落とし、消費場面に「スープ・ブレイク」を訴求した「スープ・ドリンク」戦略へと転換を図ったのでした。

商品のポジショニング変更によって売上がなぜ落ちたのか、消費者はスープに一体何を求めているのかについて、味の素社内で議論を重ねた結果、「スープの基本価値」という概念に行き着いたのでした。

「スープの基本価値」とは、スープは肉や野菜をコトコト時間をかけて煮込んで作るもので、そこには栄養だけでなく美味しさも詰まっていて、真冬には冷え切った身体だけでなく、心までも温めてくれるやさしい食べ物である、ということを意味します。
この「スープの基本価値」をマーケティング戦略の中心に据え、様々な施策を実施したところ売上は再び上昇に転じました。

しかし、2005年以降、再び停滞期が訪れて、社内ではブランドの再活性化の必要性が議論され始めましたが、とうとう2010年には、クノール・カップスープの再活性化プロジェクトが動き出しました。
味の素では、この時期の売上停滞に関わる課題を「ユーザーとの絆をいかに強くするか? どのようにして生活シーンの中に確固としたポジションを築いていくか?」と設定し、そのための具体的なマーケティング戦略を企画しました。

まず注目したのは、朝食におけるスープの位置づけです。

朝食でのパンの出現率は、ごはんよりも高い70%で、これは他の食材を抑えて最も高い出現率となっています。
また、インスタント・スープが飲まれる時のパンの出現率は70%もあります。

ところが、パンが食べられているときにスープが出てくる割合は10数%ほどでしかありませんでした。

つまり、スープから最も連想される食べ物はパンであるにもかかわらず、パンから連想される飲み物はコーヒー、ジュースなど様々なものがありスープはその中の一つに過ぎないということです。

もともとパンとスープの相性はすごくいいので、パンとスープの結びつき(連想)を強くすることによって、朝食というオケージョンにスープの立ち位置を確たるものにできれば、朝食市場におけるスープ・カテゴリー自体のシェア拡大が可能になるのではないかという仮説を持つに至ったのです。

そして、次に注目したのがインサイトです。
朝食の場面に登場する関係者は「お母さん」と「子供(中高生」」の2者ですよね。

母親のインサイトは、「朝から栄養のあるものをきちんと食べさせてから登校させたい。」であり、一方の子どものインサイトは、「朝は時間がないから、美味しいものを早く食べたい。」というものであり、一見考えると子双方のインサイトを両立させるプロポジション(価値提案)はないように見えてしまいます。

ところがよく考えてみると、スープの基本的価値は「栄養価が高いこと」であり、そのスープにパンを浸して食べることで、簡単に短時間で朝食を美味しく採ることができることに気付きます。

その上で、それまでのテレビCMなどマス広告のコミュニケーションが、原料・製法・品質訴求をする説明・説得型のものだったのをやめて、「つけパン派とひたパン派、あなたはどっち派?」としたテレビCMを開発し、「思わずスープを飲みたくなる」ような右脳・直感的なコミュニケーションに転換を図りました。

もちろん、買い場でも、広告連動型のセールス・プロモーションが展開され、POP広告には、「つけパン派とひたパン派、あなたはどっち派?」と書かれ、買い物客の目を止めさせ、購買に繋げたことは言うまでもありません。

商品自体は、長年愛用されていたスープ自体を変えることなく、「パンをスープにつけて食べること」のベネフィットをプロポジションとして提案し、関係者のインサイトの寄り添うことで、「そうそう、朝食はそうであるべきなのよ!」という共感を得ることができ、さらには、メディアから得た情報「つける」「ひたす」など食べ方について“自分ゴト化”して行動に繋げた点がこのプロモーションの効果を押し上げたと思います。

「あなたはどっち派」として、それぞれに著名なタレント(三浦春馬、北川景子)を起用したことで、メディアや店頭での展開を目にしたことを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

この事例では、関係者である「お母さん」と「子供(中高生)」の2者のインサイトを見極めて、その両者に寄り添えるプロポジション(価値提案)を自社ブランドの特徴を活かしながら作ることができたことが成功の基礎をなしているともいます。
その上で、思わずどちら派か回答したくなって無意識のうちにスープを自分ゴト化してしまう仕掛けの秀逸さには脱帽せざるを得ません。

ポジショニングについては、下記の記事を参考になさってください。

リポジショニングについては、下記の記事を参考になさってください。

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中央経済社

事業再生とセールス・プロモーション

事業再生とセールス・プロモーション事業再生のフェーズにある企業では、セールス・プロモーションを上手に実施している企業など皆無であるというのが正直な感想です。
そういった多くの企業が実施しているセールス・プロモーションといえば、価格プロモーション(値引き)だけです。

先にも書きましたが、値引販売は、内的参照価格を引き下げるだけでなく、ブランド価値を低下させるという負の影響がとても大きい施策なのですが、再生フェーズにあって資金繰りが厳しいような状況の中ではついつい手を伸ばしてしまうプロモーションであることは十分に理解できます。

こういった多くの会社でシュミレーションをしてみると、値引販売をしなかったほうがより多くの利益を獲得できていたはずだろうという結果が出てきますが、こういった中長期的な視点で経営数値を追いかけている中小企業などありませんから、値引販売の与える悪影響を理解できないことも仕方ないかもしれません。

また、事業再生のフェーズに落ち込んでいる企業に特徴的な事項は、デジタルに弱いという点です。
ウェブ・マーケティングすらまともに行われておらず、SNSを使って認知獲得を目指すプロモーションなんて思いもよらない企業ばかりです。

中小企業でもこういったツールを上手に使って成果を上げている企業も徐々に多くなってきているにも関わらず、事業再生のフェーズにある中小企業では、残念ながらそういった施策は目にしたことがありません。

こういった新しいツールも興味を持ってもらって、毎日少しの時間を投資してもらうだけで業況はガラリと変わったりするのですから、非常にもったいないといつも思います。
値引きという麻薬のようなセールス・プロモーションからはそろそろ卒業して、世の中の認知を取って話題になるようなプロモーション施策を一緒に考えませんか?

事業再生は中小企業でも取り組めるのか?については、下記の記事を参考になさってください。

中小企業が事業再生を成功させるポイントについては、下記の記事を参考になさってください。

事業再生を相談するべき専門家の選び方については、下記の記事を参考になさってください。