マーケティング・ミックスとは何か?【4Pと4Cは全く別物?】

マーケティング・ミックスと言われる4Pさえ押さえておけば、マーケティングは問題ないよと友人の経営者から教えてもらったけど、この4つのPのどんなところに注意しておけばいいのかを詳しく教えてほしい。

また、本当にマーケティング・ミックスの4Pだけ押さえておけばマーケティングは問題ないと言えるのかどうかも併せて教えてほしい。

このようなお悩みをお持ちの、学びと実践を大切にする経営者の方はとても多いように思われます。

この記事を読むことで、マーケティング戦略を考える際に必須のマーケティング・ミックスとはいったい何なのか、そして、それをどのように自社のビジネスに落とし込めばいいのかが理解でき、ビジネスに役立つマーケティング戦略の立案ができる可能性が高まります。

本記事は中堅・中小企業の事業再生に取り組んで20年以上、200社超の再生案件に関与して、マーケティングと管理会計と組織再編の力で再生へと導いてきた、企業再生のプロフェッショナルである公認会計士が書きました。

マーケティング・ミックスとは何か?

マーケティング・ミックスとは何か?マーケティング・ミックスとは、自社製品・サービスに対して購買行動を起こしてもらったり、自社ブランドへ愛着を持ってもらうための「具体的な打ち手の組み合わせ」のことをいいます

マーケティング・ミックスには、様々なフレームワークが提唱されてきましたが、最も有名なものと言えば、多くの人が一度は耳にしたことがあると思われる「マーケティングの4P」であり、多くのマーケティング関連の書籍でも紹介されています。

マーケティング・ミックスの前に

マーケティング・ミックスの前に一連のマーケティング活動の企画・実施は下記のようなプロセスをたどりますが、具体的なマーケティングの実施策を検討するマーケティング・ミックスは、環境分析を実施した後で検討する基本的なマーケティング戦略であるSTPを受けて策定されることになります。

マーケティング戦略におけるマーケティング・ミックスマーケティングの4Pは考えればいいことを網羅的に含んでいるものなので、これだけ考えておけばマーケティングは問題ないというのは大きな間違いであって、これらを考える前に、考え抜かないといけないことは山ほどあるわけです。

また、上の図からもわかるように、マーケティング・ミックスはSTPの内容に制約を受けるものであって、自由に何ら制約を受けずに決定するべきものではないことには注意が必要です。

環境分析を実施した後に、自社のビジネスが対象とするべき市場は何なのか(市場の定義)を決定し、その対象市場を有意な分類軸で細分化(セグメンテーション)し、そのうちのどの特定のセグメントを標的市場とするのか(ターゲティング)を決定します。

そして、そのターゲットに含まれる1人の生活者に焦点をあて(ペルソナの設定)、その深層心理を推し量り(生活者インサイトの把握)、ターゲットの頭の中にどういった形で代替の効かない独自の存在として自社ブランドを位置づけるのか(ポジショニング)を決定します。

こういった一連の思考を巡らせたうえで、ターゲット層の気持ちを動かして自社製品・サービスを購買してもらう具体的なアイデアを考えるフェーズがマーケティング・ミックスの4Pなのです。

マーケティング・ミックスの代表的なフレームワークである4Pはあまりにも有名なのでご存じの方も多いのですが、STP等をすっ飛ばしていきなり4Pからマーケティング戦略を考える方を見かけますが、現代のマーケティングの考え方からすれば、それはまったくナンセンスなので注意しましょう。

セグメンテーションについては、下記の記事を参考になさってください。

ターゲティングについては、下記の記事を参考になさってください。

ポジショニングについては、下記の記事を参考になさってください。

4Pとは何か?

4Pとは何か?マーケティングの4Pは、1960年にアメリカの経済学者ジェローム・マッカーシーが、その著書『ベーシック・マーケティング』で提唱したものです。

自社製品に対して生活者に購買行動を起こしてもらうためには、企業は様々な活動を実施する必要がありますが、その複雑なマーケティング活動を、MECEにたった4つにまとめあげ、その工程を可視化したことによって、的外れな活動を選択してしまうリスクを大きく低減してくれる、マーケティング活動を具体的に計画する際には必須のフレームワークとなっています。

1960年当時はマス・マーケティング全盛の時代であり、セグメンテーションやターゲティングを実施して市場を細分化しなくても、新技術の開発等の結果、製品が出来上がったならば、いかに大量生産をして価格を下げて大量販売に繋げるか、そのために販売チャネルの設計をどうすればよいか、広告によって新製品の存在をどのように認知させるかを上手く検討しさえすれば、人口が急増していた時代背景もあって、新製品やサービスを売ることは難しくなかったのです。

こういった時代背景の中で生まれてきたのがマーケティング・ミックスとしての4Pであったわけです。

このように当時はSTPという概念もなく、マーケティング・ミックスとしての4Pを考えればよかったのですが、現代では、基本的に対象市場を細分化して、ターゲティング、ポジショニングした上で、4Pを考えることがセオリーになっています。

マーケティングの4Pは、ターゲットに購買行動を起こしてもらうために必要となる具体的な施策を考えるための4つの要素をいい、各々が頭文字「P」で始まることから、4Pと呼ばれているもので、4つのPとはそれぞれ、下記の4つの要素をいいます。

  • Product(製品:販売する商品・サービス、パッケージなど)
  • Price(価格:商品やサービスの価格、値引き、割引き、支払方法など)
  • Place(流通:商品やサービスを流通させるルートや販売場所など)
  • Promotion(販売促進:広告宣伝、広報、人的販売、販売促進)

では、これらの4つの要素を1つ1つ見ておきましょう。

Product(製品)

マーケティングの4Pの中でその中心に位置するのがProduct(製品)になります。
特定のセグメントに属するターゲット層に対してどのような製品・サービスを提供するのかを考えることになります。

製品を考えると言っても、いきなり実体のある製品を作り込むのではなく、まず考えるべきものが商品コンセプトになります。
コンセプトとは、「誰に対してどのような価値を提供するのか」ということであり、「ターゲット+提供価値」を一言で表現したものになります。

その提供価値は、ターゲット層の頭の中で他には代替の効かないユニークな存在としてのポジショニングから得られるバリューのことをいいます。

このように、一般的にはSTP→4Pの順番で語られることが多いマーケティング戦略の思考プロセスですが、実務的にはSTPと4Pは行ったり来たりしながら同時並行的に、相互依存的に決めていくといった方が正確かもしれません。

提供する商品やサービスのコンセプトを概念的に決定した後で、機能・品質、ネーミング、デザイン、パッケージ、サポートサービス等の具体的な実体を決めていくことになりますが、商品やサービスのコンセプトが明確に決まっていれば、具体的な実体は自然と決まっていくことになります。

反対に、商品やサービスのコンセプトが明確に決まっていない場合には、実体がうまく決まっていかないということになります。

Price(価格)

「Price」は、商品やサービスをいくらで売るべきかを決めるステップであり、提供価格、値引き、割引き、支払方法などが含まれることになります。

ユーザーが商品やサービスに対して価格が高いと感じるのは、商品等の醸し出す提供価値に対してそこまで出す必要はないと感じている時であり、反対にこの価格なら買わなきゃと思い込ませるのは、商品等の提供価値に比して価格が割安だと感じているからです。

前者の場合だと商品やサービスが買われることはありませんので利益を獲得することができなくなります。
一方、後者の場合だと売れることは間違いないですが、余りに安い価格設定にしてしまうと売れても利益が残らないという事態に陥ってしまいます。

このように価格の決定は非常にセンシティブな課題であり、その巧拙は企業利益に直接的にインパクトを与えることになる、非常に難しい判断を強いられるものになります。

とはいうものの、「Product」を企画・開発した時点では想定するターゲットは決まっているはずですから、そのデモグラフィック情報から判明する可処分所得や、嗜好やライフスタイル、カテゴリーの市場傾向から、どの程度の価格であれば受容してもらえるかは、概ね理解することができます。

また、Price(価格)は製品ポジショニングによる提供価値によって決まると言えますが、残りの2つのPであるPlace(流通)やPromotion(販売促進)にも影響を受けざるを得ません。

たとえば、街中で150円のペットボトルのお茶は、富士山の山頂では500円で自販機で売られています。
駅の売店では数万円のワインは売れませんが、大阪新地の高級クラブで数百円の飲料を売ろうとするのも場違いです。

ブランド広告によって高級なイメージを訴求できて、高級感の記憶を維持させることで、高い価格で販売することも可能となりますし、ベタなダイレクト・レスポンス広告で一気に購買まで持っていくような場合には、高い商品やサービスをオファーなしで衝動買いさせることは難しくなります。

このように、商品やサービスが販売される場所や宣伝広告のクリエイティブが与えるイメージによって、商品やサービスから得られる価値にも影響を与えるので、その結果、価格設定にも反映されることになります。
このように、価格設定はPlace(流通)やPromotion(販売促進)にも影響を受けざるを得ないのです。

Place(流通)

「Place」とは、商品と生活者を結ぶ経路のこと言い、販売を行う場所を決めるフェーズになります。
そして単に販売を行う場所を決めるだけでなく、その販売する場所までどのようにして商品を運ぶのかという流通ルートについても検討することも含みます。

流通経路を決定する際に最も重要なポイントは、ターゲット顧客がどこにいるのかを見極めて、そこに効率よくリーチ(届ける)することができることです。
この視点で見た時に、どのようなチャネルで、どのような店舗で、どのような手段でターゲット顧客にリーチし、接点を持つべきかを検討する必要があります。

流通経路の区分には、自社販売ルートを使うのか、代理店や一般店舗を使うのかという選択や、実店舗で売るのか、ネットで売るのかなどのリアルとデジタルの区分もあります。

どれか1つの流通経路に絞ることもあるでしょうし、複数のルートを同時並行して使うという方法が良いケースもあるでしょうが、チャネルの選択の際に重要なことは、販売しようとしている商品とターゲット層との接点が多い場所を選ぶべきであるということです。

そうめんのようにお中元の需要が年間販売額の大きな部分を占める様な場合には、デパートに置いてもらわないことには、成功することは難しいでしょうし、夜食用のインスタント食品ならば、24時間営業のコンビニに置いてもらうことが成功の要因になります。

また、流通チャネルの構築には時間とコストがかかりますが、一度構築してしまえば経営資源と呼べるものに昇華され大きな強みとなる一方、時代の大きな変化に対応する必要がある場合でもその変更が非常に難しいという弱みにもなるものです。

たとえば、全国の文房具店に流通網を築いていたコクヨは、ネット販売の黎明期にアスクルが台頭した時にも、ただ指をくわえて見ていることしかできなかったのもその一例です。

Promotion(販売促進)

「Promotion」は、ターゲットや流通業者に対して、商品の存在やその提供価値を効果的に伝え、ニーズを創り上げていくための取り組みをいい、大きく分けると、広告宣伝、PR、人的販売、セールス・プロモーションの4つがあります。
こういった様々な手法のプロモーションを組み合わせて、生活者を認知から購買まで効果的に導くことをプロモーション・ミックスと呼びます。

広告宣伝

広告宣伝は、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4大マスメディアを使った従来型のものから、リスティング広告に代表されるネット広告、フェイスブック広告などのSNS広告も一般的に利用される時代となりました。

その結果、4大マスメディアを使うためのコスト負担が大きなネックとなって認知の壁を越えられなかった中小企業等も、リスティング広告やSNS広告を少額の予算で開始することが可能となって、「広く告げる」ことが企業規模によらず可能な時代となってきました。

PR

PRとはPublic Relationの頭文字をとった略称であり、世間との良好な関係づくりのことを指すものです。

広告宣伝が特定のターゲット層に向けてコミュニケ―ションすることを志向するのに対して、PRは企業を取り巻く多種多様な利害関係者とコミュニケーションすることを志向するという大きな違いがあります。

また、広告宣伝はお金を払って広告枠を買い、広告マテリアルをコストをかけて作りますが、PRの場合にはメディアに取材してもらって世の中に伝えてもらうことになりますので、基本的にコスト負担はかかりません。

広告に対する嫌悪感が大きくなってきた昨今では、メディアという第3者の権威性を借りての情報発信は、生活者には受け入れてもらい易いというメリットがあります。

さらに、戦略PRという手法では、自社のビジネスにとって望ましい世の中の空気感を意図をもって戦略的に作り込むことを志向するものであり、世の中のトレンドの把握とそこに存在する生活者のインサイトの抽出も同時に行うことが求められます。

人的販売

人的販売は、文字通り人を使って購買を促進するプロモーションの手法をいいます。
プロモーションの他の手法では、生活者の態度変容を誘導したり、購買意欲を高めたりするものが多い中で、人の手によって生活者の購買の背中を押す直接的な役割を担うものになります。

具体的には、店頭の販売員や営業マンが顧客と直接に向かい合って対話をして販売する活動をいいます。
人的販売のメリットは、人と人が直接にインタラクティブに会話をすることができる点にあります。

販売員はお客様の行動や言動の中から瞬時にインサイトを見つけ出して、それに沿う形でその場で提案ができて購買に繋げることができます。
お客様も、販売員から直接説明を受けることで商品やサービスの価値が良く理解でき、納得した上で購買することができることになります。

営業マンは、顧客との会話の中から顧客の抱えている問題を察知することができ、その問題を解消するような提案を行うことで長期的に良好な関係を築くことが可能になります。

セールス・プロモーション

セールス・プロモーションは、元来sales point promotionの略であったものが、いつの頃からかは不明ですが、単なるsales promotionであるという間違った認識が世の中に広まってしまったようです。

sales point promotionとは、「商品の魅力を広めること」なので、sales(販売)とpromotion(販促)を意味するという説明は間違ったものです。

「商品の魅力を広めること」がセールス・プロモーションなのですから、そもそも商品やサービスに魅力があることを前提とした活動です。

したがって、生活者にとって魅力のない商品やサービスをセールス・プロモーションで世の中に広めたら、二度と買うものかというお叱りを受けるだけになるので、そういった場合にはセールス・プロモーションなどを実施するべきではなく、その前に、商品やサービスの見直しを行うようにしましょう。

セールス・プロモーションは、具体的には、売場におけるPOP、試食、キャンペーン等、新聞折込、ポスティング、ダイレクトメール、チラシ等のメディア、SNS、メルマガ、オウンド・メディア等をさします。

また、市場分析と顧客情報のデータベースを基盤とした、顧客との双方向コミュニケーションによるダイレクト・マーケティングは、セールス・プロモーションの一種です。

このように、購買の一歩手前に入る見込客の最後の一押しで購買に至らせるもののうち、人的販売を除くものをセールス・プロモーションと呼ぶことになります。

ダイレクト・マーケティングについては、下記の記事を参考になさってください。

ダイレクト・レスポンス広告については、下記の記事を参考になさってください。

消費者購買行動モデル

生活者が商品やサービスの存在を知らないことには購買することなど出来ないわけなので、まずは彼らに商品やサービスの存在を認知してもらう必要があり、最終的に購買に至るまでの態度変容と行動変容を設計する必要があります。
そして、そのプロセスとして、AIDMAAISASなどの消費者購買行動モデルに関する様々なフレームワークが考案されています。

最近では、生活者の能動的な検索行動を使ったウェブ・プロモーションだけでなく、すっかり我々の社会インフラとして定着したSNSを活用した、検索行動のステップを省いて認知獲得を進める方法など、プロモーションの手法が多様化しています。

販売促進(プロモーション)を企画設計するためにも、基本的な消費者購買行動モデルを抑えた上で、自社ビジネスのおける顧客の購買行動をモデル化しておく必要があります。
こういった顧客の購買行動モデルを可視化するカスタマー・ジャーニー・マップなどのツールもビジネスの現場では良く遣われるようになっています。

4Cとは何か?

4Cとは何か?マーケティングの4Pとよく似た用語に、マーケティングの4Cというものがあります。
マーケティングの4Pは、1960年にアメリカの経済学者ジェローム・マッカーシーが考案したフレームワークですが、マーケティング4Cは、1990年に同じくアメリカの経済学者であるロバート・ローターボーンによって提唱されました。

マーケティング4Pは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)を表すものですが、その思考の視点は生活者に商品等を提供する側にあり、プロダクト・アウト的な発想があります。

もそもマーケティング活動は、特定のセグメントにターゲット市場を定め、そのターゲット層のインサイトを推し量って顧客を理解することからはじめる活動だということを考慮すれば、プロダクト・アウト的発想の4Pは時代遅れだというラウターボーンの主張は極めて納得できるものでしょう。

ラウターボーンの提唱したマーケティングの4Cは、4つの要素を消費者の目線で捉えなおしている点に特徴があります。
4Cは、1960年以降広く普及していた4Pをベースに置きながら視点の転換を図り、見方を180度反対にしたフレーム・ワークです。

マーケティング・ミックスの4C上の図を見て頂くとわかるように、プロダクト・アウト的発想を強く感じる企業目線の「Product」に対して、4Cでは「Customer Value(消費者が感じる価値)」として再定義しています。

以下、同じように、価格を表す「Price」を消費者の損失感を示す「Cost」に、流通(販売場所・方法)を意味する「Place」を消費者が感じる利便性を示す「Convenience」に、ワンウェイな意味を強く感じる販売促進の「Promotion」を、インタラクティブな双方向性の意味を持ち、人と人とのつながりを示す「Communication」に、各々言葉を置き換えています。

マーケティング・ミックスの前のフェーズに、「ターゲット顧客の消費者インサイトの把握」を置いていることからもご理解頂けるかと思いますが、ビジネスを動かすものは最終的に人間の深層心理ですので、ターゲット顧客のインサイトを頭に入れながら、マーケティング・ミックスを考えるほうがベターであることは間違いありません。

たとえば、Product(商品)を4Pの視点で見てしまうと、どうしてもその品質やスペックを重視した「実体としてのモノ」として見てしまいがちです。

一方で、Product(商品)を生活者視点で見る4Cに置き換えてみると、それはもはや単なる「実体としてのモノ」ではなくなり、自分に対しての意味、つまりは自分にとってどのような価値があるかという点を自然と重視するようになって、「実体としてのモノ」と様々な文脈に置かれた生活者との間に存在する「モノの意味=価値」がクローズアップされ、それによって生活者が抱えている問題が解決されるかどうかが見えやすくなります。

このように、4Cは、生活者が「商品」を選択する際には単なるスペックやブランド力だけではなく、その「商品」によって自分の抱えている問題が解消されたり、日々の生活がより楽しいものとなったり、商品を所有することで自己実現が図れたりするなどといった、4Pでは捉えきれなかった生活者の深層心理を洞察することの重要性を意識させることとなりました。

しかし、そもそもマーケティングは生活者インサイトに寄り添う活動であることを考えてみれば、4Pというフレームワークで考えていたとしても、4Cで指摘されている内容は自然と思考の対象となっているはずだと思います。

したがって、ラウターボーンの主張がとても斬新なものであったというわけでもなく、ともすればサプライアーズ・ロジック(供給者側の論理)に陥りがちなマーケティング活動に対して注意を喚起するものであったと考えるべきものだと思います。

4Pは時代遅れでこれからは4Cの時代だ!などという論調も見かけたりしますが、4Cの概念はもともと4Pに包含されているものであって、そこに対立構造を持ち込んでどちらが優れているかを議論することはナンセンスでしょう。

消費者インサイトについては、下記の記事を参考になさってください。

事業再生とマーケティング・ミックス

事業再生とマーケティング・ミックス事業再生の現場に長きに渡って身を置いていると、再生のフェーズに落ち込んだ企業のほぼ全てにマーケティング的な発想がないことが理解できます。
「マーケティング的な思考が欠けているから、業績が悪化し再生のフェーズに落ち込んだ。」という命題の因果関係の立証は困難ですが、1つの仮説としては十分な説得力は持ちえると思います。

再生のフェーズで苦闘している企業といえども、これまでに多くに製品やサービスの開発を行い販売してきたことは間違いないのですが、具体的な商品やサービスの開発の前に、STPの後を受けて商品コンセプトの開発を行うといったマーケティング戦略の基本的な思考プロセスを辿ったという話はまず聞くことはありません。

その多くが何となく開発しました的な感覚に頼ったモノが本当に多く、論理的に検討を加えたという事例には残念ながら出会ったことがないというのが現実なのです。

もちろん、感性的な発想の重要性は理解していますが、そのような発想の方法は再現性がないので、基本に立ち返って教科書通りにSTPを熟考した後に、商品コンセプトの開発から4Pをスタートさせるということは、とても大事なことのように思います。

再生のフェーズにある企業は、4Pに至る前のSTP戦略、さらには環境分析なども意識して取り組んだことがない企業ばかりなので、4Pの中の4つの要素も整合性が取れていないことも往々にしてあります。
しっかりとマーケティング・ミックスの前段階からロジカルにきっちりと思考を組み立てていれば、このような不整合は起こるはずもないのです。

生活者を取り巻く環境が大きく変化している現代では、商品やサービスのコンセプトと、環境や文脈の変化の影響を受ける消費者ニーズとの間に大きなズレが生じているケースがとても多いので、商品やサービスのコンセプトの見直しが急務である中小企業は少なくないものと見ています。

マーケティング・ミックスの中でも最も重要なものがProduct(製品)であり、その実体的な部分を具体的に検討する前の商品コンセプトやサービスコンセプトの開発が、ほぼ全てだと言っていいくらいです。
ここをしっかりと決めることができれば、実体部分が自然と具体的に決まることになり、他の3つの要素もProduct(製品)を中心としてインタラクティブに決まってくることになります。

全ての中堅・中小企業にマーケティングを。

中小企業が事業再生を成功させるポイントについては、下記の記事を参考になさってください。

破綻懸念先のランクアップ方法については、下記の記事を参考になさってください。

事業再生を相談するべき専門家の選び方については、下記の記事を参考になさってください。