事業再生にマーケティングは不要?【不要どころか必須です!】

父が創業した自動車教習所も私で三代目。
来年には現社長の父から事業を承継する予定だ。

生徒の数が少子化の影響なのかどんどん減っていて、銀行さんが言ってたように、そろそろ事業再生に取り組まないといけないんだろうな。

事業再生の専門家はマーケティングが得意ではないって銀行さんが言ってたけど、マーケティングの力って事業再生には不要なのかな?
そんなんで当社の再生もお願いしていいのかな?

事業再生に取り組むことを考えている経営者の中にはこんなお悩みを抱えておられる方もいらっしゃるかもしれませんね。

そこで、この記事では、事業再生におけるマーケティングの位置づけについてお話していきますね。

この記事を読むことで、事業再生にマーケティングが必須であることが理解でき、外部の専門家に再生のアドバイザーをお願いする時に、マーケティングの素養をある専門家を選ぶことができるようになります。

本記事は、中堅・中小企業の事業再生にたずさわって20年以上、200社以上の再生案件に関与して、マーケティングと管理会計と組織再編の力で再生に導いた事業再生のプロの公認会計士が書きました。

事業再生にマーケティングは不要?

事業再生にマーケティングは不要?結論から申し上げると、事業再生にマーケティングは必要です。
必要どころか必須ですね。

なぜなら、事業再生は事業そのものを再生することをいうのであって、事業を再生するためにはマーケティングの力が必須だからです。

たとえば、私が関与した案件で、地方都市の自動車教習所の再生案件がありました。

この事例では、マーケティング思考をばんばん使って再生実務を進めましたが、この事例をお読みいただくことで、マーケティングが事業再生の現場でどれだけ必要かがご理解いただけると思います。

地方における事業再生の取り組み方については、下記の記事を参考になさってください。

事例

マーケティング思考で事業再生

素晴らしいミッションを持つ自動車教習所

この自動車教習所は某地方都市にあって、競合する自動車教習所はここ以外に3社ありました。
大学もいくつか存在し、その学生の争奪戦のために激しい価格競争を実施していました。

学生からすれば、運転免許証が取れればそれでいいし、そもそも自動車教習所に通うのが面倒くさく、大事なバイトにも行けないこともあり、とにかく早く運転免許を取得して卒業したいと考えているでしょう。

なので、学生が選ぶ自動車教習所は、「学校に近く、安くて、早く卒業できる」教習所で、「近い 安い 早い」の3要件を満たすものでした。
実際にこの3要件を満たしている街中にある教習所は入所者数を大きく伸ばしていました。

ではこの教習所はこの3要件についてどうであったかと言えば、「近い 高い 早く卒業できない」と、3要件のうち1つしか満たしていませんでした。
これには理由がありました。

それは、創業者である現会長が、「交通事故をない世界を作る。」という素晴らしいミッションを掲げ、その世界を実現するために「教習所では徹底的に安全な運転を身につけさせる。」ことを指導方針としていたからです。

この教習所は街中の大学の近くにあり、「近い」は満たすのですが、会長の方針を守って卒業試験はこの教習所が求める安全基準を満たす生徒しか卒業ができないので、卒業試験を1回でパスするのは難しく、大半の生徒が2回、3回と卒業試験を受けなければなりません。

なので、自然と卒業するまでの期間は長くなり、卒業試験に不合格になると補習を受けなければならず、その補習時間分のコストが上乗せされているので、価格が他所よりも2万円ほど高くなるというわけです。

創業者の描いた素晴らしいミッションを愚直に守り抜く素晴らしい会社です。

資金繰りの安定化

さて、この会社は売上がここ5年間どんどん減少していて、このままでいくと赤字に転落するのは目に見えていました。
生徒の数が少子化の影響もあってかどんどん減っているのです。

メインの金融機関はそのエリアで大きなシェアを持つ地銀であり、借り換えを行ってニューマネーも一緒に入れてもらえるという話で、そのために抜本的な事業再生案を作ってほしいという依頼でした。

借り換えによるリスケ(元本返済の長期化)と運転資金見合いのニューマネーの投入という金融支援によって、財務の再構築(資金繰りの安定化)はある程度行えるということです。

資金繰りの安定化など財務の再構築をもって事業再生と勘違いしている風潮は未だに強いわけですが、資金繰りの安定化を図っただけで、「生徒数の減少」という直接的な窮境原因の解消にはつながらず、いったん資金繰りが安定化しても、早晩資金繰り逼迫の状況は目に見えていますよね。

日本の事業再生の抱える問題点については、下記の記事を参考になさってください。

事業再生にあたって銀行から紹介されることの多い認定支援機関については、下記の記事を参考になさってください。

自動車教習所の提供するサービス

さて、いよいよマーケティングを使った話をしていきますね。

「自動車運転免許を取得できるだけの運転ノウハウを身に付ける」というサービスを売っているのが自動車教習所です。
それは、毎日近所のコンビニで買うペットボトルのお茶のように、一生のうちに何度も何度も買うものではなく、通常は悪さをしない限り一生に一回買えば事足ります。

これは何を意味するかというと、購買前にそのサービスを買った経験が全くいないので、自分の経験をもとに選択するという買い方ができないということです。
つまり、自分の経験を基礎にした教習所間の「品質の差異」が知覚できない状態にあるということです。

コンビニのペットボトルならば、異なるブランド間を行ったり来たりできるので、自分の経験をもとにブランド間の品質の差異を自分なりに把握できていますが、教習所はそもそも人生の間で基本的に1回しか通わないので、すべての教習所の品質等を確認する機会がないのです。

また、〇〇教習所を出た人は事故率が高いし、△△教習所を出た人は事故率が低いというようなデータが世の中に出回っていれば、各教習所の提供サービスの品質の差異が視覚化され、教習所を選ぶ際の1つの重要な情報として機能しますが、そういった情報は出回っていません。

(注:卒業教習所ごとの事故率のデータは公表されていませんが、実は実際に存在し、それによれば、卒業教習所と事故率の間には統計学的に有意な関係はありませんでした。
この教習所の卒業生の事故率も一般的なものでした。)

学生自身の周りでも「〇〇教習所行くと事故起こすよ。」などというまことしやかなうわさが出回るほど、教習所によって品質の差異があるかというと、そのようなうわさなど聞いたこともないし、差異を実感することなどないというのが実際のところです。

つまり顧客である学生からすれば、「どこの教習所へ通っても同じ」という結論に至らざるを得ないわけです。
マーケティング的には、自動車教習所という商品は、顧客が識別できる差別化要素に大きな差異はないということになり、価格競争に陥りやすくなります。

以上のように、「自動車運転免許を取得できるだけの運転ノウハウを身に付ける」というサービスは、購買前に自分の購買経験を基礎にした「品質の差異」が知覚できないこと、また、世の中に「品質の差異」を示してくれる客観的な情報もないこという特徴をもった、マーケティングの観点からはとても面白いカテゴリーの商品なのです。(価格.comにも出てないし・・・)

購買の選択基準は何か?

では、そういった「品質の差異」が明らかでない商品を買う時に、顧客は何を選択の基準とするのでしょうか。
マーケティング的には、これを購買決定基準(KBI=key buying factor)と呼びます。

おそらく皆さんも経験があると思いますが、まずは近くにある教習所を選ぶ人が多いのではないでしょうか。
頭の中で言語化されていなくても、「教習所なんてどこも同じ」という無意識の世界にある思い込みが、「近くにあること」を選択の基準とさせるのでしょう。

また、どこの教習所が一番いいのかなと少し考える人は、すでに免許を取得した友人の意見や、自分の兄弟や両親の意見を参考にしながら、WEBで提供される情報を参考にしながら決定するのだと思います。

ここで「一番いい」のは、教官が優しくて親切なことをいうのか、教習レベルが高いことをいうのか、カフェテリアがきれいなことをいうのか、受付のお姉さんがかわいいことをいうのかは人それぞれなので、自分が「一番いい」と思う内容に沿う情報を探すことになり、その情報に合致する教習所を選択するのだと思います。

これはマーケティング的には確証バイアスという言葉で表現されます。

誰の意見を参考にするか?

そして、この中で誰の意見を最も重視するかと言えば、自分と価値観の近い仲の良い友人ではないでしょうか。
教習所について「一番いい」と思う内容がおおむね一致することが予想されるのが、仲の良い友人のはずだからです。

そしてその友人の多くは同じ大学の同級生だと思われ、もし彼らもバイトに忙しく自動車教習所は早く卒業できたほうがいいと考えていたとすると、このクライアントの教習所は圧倒的に不利だということになります。

さて、マーケティング調査の1つの手法にアンケートがあります。
とてもマーケティングっぽいと感じる人も多いと思われるこの手法、実はとても設計が難しい。

そのあたりはまた別記事によることとして、この会社では、学生が入所した際にアンケートを取ってもらうようにして、その中に「当教習所を選んだ理由を教えてください。」という質問を入れました(選択式)。

その回答を集計してみたら、3割が近かったからという理由で、3割が友人のすすめ、1割がウェブサイトを見て自分で決めた、1割が家族のすすめ、2割がその他という結果でした。やはり友人や家族のすすめは強いのですね。

この教習所の方針は正しいか?

上記の選択式の質問だけでは、当教習所を選択した本当の理由が明確にはならないので、続けての質問に、「その人のどんな言葉に魅力を感じて当教習所を選びましたか。」という質問を入れました(自由記述式)。

そして、その結果を集計したら、最も多かったのが学生のすすめ経由での「先生がとてもよい、先生が楽しくて通うのが楽しみ、先生の教え方が上手」という先生に関するものでした。
友人の口コミ経由で他の主なものは、「近いからいいよ、街中で便利だよ、安いよ(安くないのですが)」といったものでした。

両親や家族経由のものでは、「私が通ってよかったからあなたもどうぞ」とすすめられているようで、その良さはここからは判断できませんでした。

ウェブサイト経由では、「他の教習所と比較してもわからないからなんとなく決めた、料金体系がわかりやすかった、ネット申込割引きに魅かれた、受付の方の笑顔がよかった」など様々な回答がありましたが、ウェブサイトに謳われている「高いレベルの教習指導、時間はかかりますが身に付けた運転技術は本物です。」に魅かれたとする回答はゼロでした。

ここからわかることは、「高いレベルの運転技術を身につけたい」と考えている学生はほぼいないということです。

ここの教習所の卒業生で大人になってから、交通安全意識が高まり、この教習所でよかったと思う親はいることは否定できず、そういう理由から自分の子供にこの教習所をすすめている両親もいると思われますが、その気持ちは子供にはおそらく強く伝わってはいないのでしょう。

つまり、「高いレベルの運転技術を身につけたい」と考えている学生はとても少ないのではないかという仮説の存在が強く推論されるということです。

そこで、自動車教習所の方針である、「レベルの高い運転技術を教えるために時間をかけて指導する。その結果、価格は高くなる。」を変えることができるのかどうかということを社長以下役員に確認しました。
ここを変えることができるならば、「教習期間はできるだけ短くしてバイトへ行きたい、価格は安ければ安いほうがいい」という多くの大学生の持つであろうマーケティング・インサイト(インサイトは気もち。この場合は比較的浅い心理であり、学生も言語化できている)に寄り添うことができるからです。

社長の回答はNOでした。
会長がかたくなに守ってきた方針を変えることはできないとのことでした。
そこを曲げたらうちがうちではなくなってしまうと。
これはいわゆる方針制約というボトルネックの一種ですね。

そして、社長は続けて、「他の教習所と差別化を図るという意味でもうちはうちらしくこれまで通りのほうがいいのでないか。他所はすべて「近い 安い 早い」の3拍子揃えてやってるのだから、他所と同じことをしたら違いが判らないではないか。うちはうちらしいのでその違いが分かりやすくて目立つでしょう。」とのこと。

これはいわゆる差別化の罠ですね。
たしかに違いを出すことは戦略の要諦なので大事な考え方なのですが、差別化したところの市場が小さければその差別化は独りよがりでしかないのです。

「レベルの高い運転技術を教えるために時間をかけて指導する。その結果、価格は高くなる。」という方針のもと、提供されるサービスは確かに他所とは全く違うものとなります。
しかしその差別化された価値を求める人はアンケート結果から帰納的に考えれば、ほぼいないのです。
これは当社のアンケート結果のみからの推論ですが、実際の市場ではこういった層はもっと小さいことが予想されます。

マーケティング的には、市場の顕在化したニーズに、提供価値が合致していないというシンプルな問題なのです。
なので、マーケティングの観点から本来あるべき事業の基本方針は、「近い 安い 早い」に合わせることです。
その上でどこか他所と違うエッセンスを入れ込めないかと若干の差別化を考えるべきなのですね。

でも、社長は会長の方針を変えることができないと言います。
このままでは市場のニーズとズレたサービスを提供するだけなので、近いうちに赤字へ転落がすることがますます視界にはいってきました。

セカンドベスト

先ほども書きましたが、マーケティングの観点から本来あるべき事業の基本方針は、「近い 安い 早い」に合わせることです。
その上でどこか他所と違うエッセンスを入れ込めないかと若干の差別化を考えるべきなのです。

ところが会社の方針としてそこは変えるつもりはないとのこと。

創業者の描いたミッションは間違いなく素晴らしい。
僕がいま免許取る前の大学生だったら間違いなくこの教習所へ入りたいと思います。
でもそのミッションをそのまま戦略にしたら市場のニーズとズレる・・・ジレンマですよね。

こういうケースは案外多くて、こちらがベストだと思う会社の基本方針が会社の文化になじまなくて却下される。
そういう場合は説得したって無理だし、説得がうまくいったと思ってもシコリが残ったりします。
なので、次善の策(セカンド・ベスト)を考えないといけません。

市場の再定義

この会社のターゲット顧客(市場)は大学生です。
もちろん、免許を取得しようと思っているという限定が付きますが。

さて、マーケティングの入り口は市場の定義なのですが、まずはその市場をズラしてみようと考えます。
これをマーケティングでは、市場を再定義すると言います。

現在のターゲット顧客は大学生であり、ほぼ100%入所してくる生徒は大学生です。
でも免許取る人は大学生だけではないですよね。
免許持ってない主婦の方がパートの仕事の都合で免許が必要になって免許取得のために教習所に入所することもあるだろうし、大きそうな市場としては大学進学せずに就職する高校生もいます。

そして、この教習所には高校生はほとんどいませんでした。
大学への営業(生協回り)がすべてであり、高校へ営業にも行ってないとのことでした。

ちょうどその頃、運転免許に関する法律が変わって、準中型自動車免許が新設されることとなりました。
中型運転免許は20歳以上でなければ取得することができず、高校を卒業して就職する高校生が就職後には中型免許がないので、実質配送業務等を行うことができないため、実務の世界からの強い要望が法律改正の後押しとなったようです。
準中型免許は18歳から取得することが可能なので、新しい市場として取り組む可能性があると考えました。

どの業界でもそうですが、法律の改正などは世の中が動く時なので、そこにはセンシティブになっておく必要があります。

さて、準中型免許という切り口が出てきましたが、これを契機に普通自動車免許でも高校生をターゲットにするべきではないかということも検討しました。

「自動車運転免許を取得できるだけの運転ノウハウを身に付ける」というサービスは品質の差異の知覚ができないという、マーケティング的には面白いカテゴリーの商品だという話をしましたが、もう一つ面白い特徴を持ち合わせています。

大方の商品やサービスは、意思決定者、コスト負担者、便益享受者の3つが一致します。
たとえば、あなたがスーパーで今日の晩ご飯のおかずを何にしようかなと考えて、回鍋肉を作ろうと思って豚肉を買ったとします。豚肉を買おうと意思決定したのも、豚肉のコスト400円を負担するのも、美味しい回鍋肉の料理を楽しめる(便益享受)のもすべてあなたです。
このように、大方の商品やサービスの場合、この3つは一致します。

ところが「自動車運転免許を取得できるだけの運転ノウハウを身に付ける」というサービスはどうでしょう。
大学生の場合、この教習所にしようと意思決定するのは大方本人でしょうし、運転免許を取得することによる便益は本人が享受します。
また、コスト負担については親に出してもらう学生もいるでしょうし、アルバイトで自ら稼ぐ学生もいるでしょう。

一方、高校生の場合どうでしょうか。
運転免許を取得することによる便益はもちろん本人が享受します。
コスト負担については親が出す場合がほとんどではないでしょうか。
子供が就職という新しい門出を迎え、おそらく子供のための最後のまとまった出費となるでしょう。
もちろん高校生がアルバイトで稼いでということもあるでしょうが、大学生の場合に比べて親が出す可能性が高いと思います。
そして親がお金を出す場合には、どの教習所を選ぶかについては親の意向が強く働くのでないかという仮説を持ちました。
親としては、自分の子供が万が一でも自動車事故を起こしたりしないかと不安になっているはずです。
自分の子供が安全運転を徹底して、事故を起こすことなく今後の人生を幸せに歩んでいってほしいと願っているはずですよね。

ということは、この会社の方針となっている会長の描いたミッション「交通事故のない世界を作る」は、子供の親には大きく響くはずだと考えました。
その目指す世界観を語り、そのために当社はどんなカリキュラムを組んでいるかを説明すれば、子供の安全と幸せを願う親の心(マーケティング・インサイト)を動かして、子供の自動車免許取得のための教習所としての選択肢には入れると考えたのです。

そこで市内の今春卒業予定の高校生の名簿を業者から買って、大学進学実績の低い高校を中心にしてDM(ダイレクトメール)を発送しました。

中には社長のあいさつ文とカリキュラムを説明したパンフレット、今回だけの割引クーポンを同封しています。

あいさつ文には、会社の方針と目指す世界観を熱く語ってもらい、ご両親に訴えかけるようなライティングを心掛けました。
宛名は、高校生の名前の横にやや大きめの文字で「お父様 お母様」と加えることも忘れてはいけません。
(「お父様 お母様」とするのと「保護者様」とするのでは開封率は変わると思います。)
高校生の宛名だけだとご両親は読まないからです。
こういったライティングのスキルもマーケティングの大事なスキルの1つになります。

結果、60名程度の高校生から申し込みがありました。会社の素晴らしいミッションは親には響くのではないかという仮説が立証されたわけです。
この成功体験で会社は大学生だけでなく、それまで注力してこなかった高校生という新しい市場を手に入れるきっかけを作ることができました。
以降、高校生という新市場に対する取り組みを精緻化してより多くの生徒を受け入れるようになっています。

経営環境の変化への対応については、下記の記事を参考になさってください。

事業再生の論点については、下記の記事を参考にされてください。

セグメンテーションについては、下記の記事を参考になさってください。

マーケティングの力

マーケティングの力この事例では実際に行った思考のプロセスを言語化して説明しましたが、ここで使っている知識とスキルはマーケティングという分野に関するものと、思考スキルとしてのロジカル・シンキングとクリエイティブ・シンキングです。

ロジカル・シンキングは1つの事実があった時に、その事実から何が言えるのかを推論すること、ただ推論するのではなく、そこに高い確度の因果関係を備えていることです。

クリエイティブ・シンキングは仮説構築と、ジャンプした思考(因果の飛躍)を指します。
たとえば市場をズラすという思考の方法は極めてクリエイティブですね。

こういった基礎スキルとしての思考スキルの上にマーケティングという専門分野の知識が動き回ることで、ここで展開したような思考ができるようになるわけです。

ここで展開した話は財務会計や管理会計の話でもないし、税務の話でもないことは一目瞭然だと思います。
マーケティングを学んで身につけた者だけしかこういったアドバイスをクライアントに対してできないということです。

この事例の中で特に注目してもらいたいが、顧客ターゲットの気持ち(マーケティング・インサイト)にフォーカスする場面がとても多いということです。

ビジネスは最終的に人の気持ちに支配されています。
どんなに素晴らしく品質の良い商品やサービスであっても、どれだけロジカルにその商品やサービスのすばらしさを説明されても、買いたいと思わないと買ってもらえないのです。

その買いたいと思ってもらう気持ちの前に存在している、購買に繋がる深層心理にどれだけアプローチできて、そこをくすぐって気持ちを解きほぐし、購買行動へ繋げることがマーケティングの肝になります。

マーケティングの力は本当に絶大です。
事業再生にはマーケティングが必須だということをこの事例を通じてご理解いただけたことと思います。

マーケティング思考については、下記の記事を参考になさってください。

マーケティングの歴史については、下記の記事を参考になさってください。

アイフルのマーケティングについては、下記の記事を参考になさってください。

事業再生に取組むにあたって相談するべき専門家の選び方については、下記の記事を参考になさってください。