廃業手続きを賢く行う方法【経営者の個人保証、なんとかなる?】

会社を再生させようと頑張ってきたけれど、もうどうにも駄目だから、ここらへんで諦めて廃業しようと思うんだ。
でも、銀行からの借入金に個人保証しているし、自宅も担保に入っているから、廃業すると全部取られてしまうんだろうか。
そうなら住むとこから探さないといけないな。
何かいい廃業の方法があったら、教えてほしいな・・・

こんな悩みを抱えたまま廃業することができずに、ずるずるとビジネスを続けて頑張ってらっしゃる経営者は多いのかもしれませんね。
そんなお悩みをお持ちの経営者は、この記事を読んだらすぐに専門家にご相談ください。

この記事では、廃業する方法と、経営者の個人保証の取り扱いが現在でどうなっているのかわかりやすく説明しますね。

本記事は、中堅・中小企業の事業再生にかかわって20年以上、200社超の事業再生案件に関与して、マーケティングと管理会計と組織再編の力で再生に導いてきた事業再生のプロである公認会計士が書きました。

廃業手続きの賢いやり方

廃業手続きの賢いやり方事業を再生させるために頑張っても、上手くいかないこともあります。
提供している商品やサービスが社会の中で価値がなくなれば、淘汰されていくのは仕方のないことですから、できるだけ早く廃業をして新たに再スタートを切ることは、日本の経済の活性化にとってもとても良いことなのです。

会社の解散手続き

破産や清算という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、廃業しようと決心したとしても、いきなり破産や清算ができるわけではありません。
廃業を決心しても、破産や清算という手続きに入る前には、必ず会社の解散手続きが必要になります。

会社の解散とは、それまで行ってきた会社の営業活動を停止して、会社を消滅させることに向けて実施するべき最初の手続きのことです。
会社法は、会社の解散原因として下記の7つを定めています。

  1. 定款で定めた存続期間の満了
  2. 定款で定めた解散事由の発生
  3. 株主総会の決議
  4. 合併により会社が消滅する場合
  5. 破産手続開始の決定
  6. 裁判所による解散命令
  7. 休眠会社のみなし解散の制度

現代で事業再生のフェーズに落ち込んでいる企業の多くは、提供している商品やサービスの価値が、世の中の生活者に受け入れられなくなっていることがほとんどです。
10年位前は、過去における過大投資等が原因で本業はまだまだしっかりしているというような企業が多かったのですが、そういった企業の事業再生による手当は大方終了しており、現代において事業再生を必要とする会社の多くは、「商品・サービスのコンセプトと生活者のニーズとの不一致」によるものが大方を締めています。

事業再生においては、このズレを修正する(複数の方法があります)ことが必要なわけですが、すべての企業がこのズレを修正できるわけではありません。
そもそもズレを修正する方法が見つからないこともありますし、その方法を見つけても実行力の欠如から、結局はズレの修正に至らない企業も存在します。

そのような場合には、最終的に事業の継続を諦めて廃業せざるを得ないケースもあるのです。

このように、会社の再生に向けて尽力したのだけれども、ビジネスを継続することが困難で廃業せざるを得ないケースもありますし、昨今特に多くなっているのが、経営者の高齢化と事業承継者の不在のために廃業せざるを得ないというようなケースです。

事業自体はニッチなビジネスで一定の収益性があるような事業でも、その規模の小ささから大手企業からは魅力的に見えないことからM&Aも成立しないままに、惜しまれつつ廃業に至るケースも最近はよく耳にするようになりました。

こういったケースでは、3の「株主総会の決議」や5の「破産手続開始の決定」により会社を解散することになります。
会社の解散原因のうちで、解散の理由として最も多いのは、上記3の「株主総会の決議」です。
他の原因はそうそう生じるものではありませんからね。

この場合には、株主総会を開催して解散決議(特別決議)をし、定款に清算人の記載がなければ同時に清算人を選任します。
その後、解散の日から2週間以内に、法務局で解散及び清算人選任登記を申請し、登記が完了すれば、解散手続きは完了します。

先ほども書きましたが、解散手続きを完了しただけでは会社は消滅することはありません。
会社の貸借対照表を見ればわかりますが、解散手続きを完了した時点では、まだ会社には売掛金や貸付金、機械や車両などの有形固定資産等々の資産と、買掛金や未払金、未払税金や借入金等の負債が残ったままの状態になっています。
この後に清算手続きを行って、資産を現金化して負債の弁済を行わなくては廃業することはできないのです。

その清算手続きは、会社の資産と負債がどのような状態かによって大きく2つの方法に分けられます。
資産の額が負債の額を上回っている場合には、通常清算手続きを行えばよいのですが、資産の額が負債の額を下回っている場合には、通常清算手続きでの清算は認められておらず、特別清算手続きや破産手続きといういわゆる倒産手続によることになります。

通常清算手続

通常清算手続きは、解散した会社が資産超過の状態にある場合に使える方法で、資産超過とは資産の時価合計額が負債の時価合計額を超える場合をいいます。
つまり、会社の資産を売却して現金化したら、その現金で負債を全額弁済できる場合に採用できる手続きが通常清算手続きなのです。

通常清算手続きは倒産手続きではないので、裁判所の監督を受ける必要もなく、清算人のみで清算業務を遂行することができる手続きです。

特別清算手続きと破産手続き

また、解散した会社が債務超過である場合、もしくは債務超過である疑いがある場合には、通常清算手続きは使えず、特別清算手続き、または破産手続きを選択しなければなりません。

特別清算手続きと破産手続きは、いずれも清算型の法的整理手続に属します。
どちらの手続きも裁判所が選任した破産管財人または特別清算人が,債務者企業の資産を売却して現金化し、これを債権者に分配するという点では共通しています。
しかし,この2つの手続きは根拠となる法律がそもそも違うことから、様々な点で相違が認められることになります。

各々の手続きの相違点は下記の表にまとめておきましたので、ご参考になさってください。

破産手続き 特別清算手続き
根拠となる法律 破産法 会社法
適用の対象となる債務者 個人及びすべての法人 清算中の株式会社
手続きの開始原因 債務者が支払い不能である場合、もしくは、債務超過である場合 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合、
もしくは、債務超過の疑いがある場合
手続きの遂行を行う者 裁判所によって選任された破産管財人(債務者と利害関係のない第三者であり、実務上選任されるのは弁護士に限られる) 裁判所によって選任された特別清算人
(清算人がそのまま特別清算人に選任される)
債権者の同意 債権者の同意は不要 債権者集会に出席した議決権者(債権者)の1/2以上、かつ、議決権者の議決権の総額の2/3以上の議決権を有する者の同意が必要

上記で書いたように、これまでは、債務者企業が時価ベースで債務超過である場合には、法的整理手続きである特別清算手続き、または破産手続きによって会社を消滅するしか方法がありませんでした。

そして、債務者企業が債務超過の場合に、法的整理手続きとして破産手続きを採用したいと思ったとしても、裁判所への予納金が高額となってしまうことから、破産したくても破産できないようなケースも多くありました。

このような問題点を解消する制度として、清算を目的とする準則型の私的整理手続きが制度化されるに至りました。

準則型私的整理手続き(清算型)

準則型私的整理手続きの中には、当初から再生ではなく清算して廃業することを念頭に置いた手続きがあります。
それは、廃業支援型特定調停とREVICによる特定支援という2つの手続きになります。

廃業支援型特定調停

小泉首相・竹中大臣による不良債権処理が始まって以降、債務者区分をランクアップさせる必要性のあった多くの企業についてはターンアラウンドの手法を用いて再生もしくは清算へと導いてきました。

そして、その後リーマンショックによって逼迫した多くの中堅・中小企業の資金繰りを、亀井静香大臣の肝いりで始まった「中小企業金融円滑化法」が救い、それを引き継いだ森金融庁長官の不良債権の査定の廃止によって、中堅・中小企業の事業を支えるという観点から必要な資金がそういった会社に流れ込んだ結果、借入金が膨らみ過剰債務に苦しむ中堅・中小企業事業者が多く存在することにもなりました。
そういった事業者の多くは経営者の高齢化と後継者不足という問題も抱えています。

このような近年の中堅・中小企業事業者の実情に鑑みると、経営を改善して経営を継続するばかりではなく、廃業の手続きもひとつの選択肢としてニーズが高い時代となってきました。

そこで、日本弁護士連合会は最高裁判所等の関係機関と協議をして、新たに廃業支援型の特定調停スキームの手引き書を策定し、平成29年1月に「事業者の廃業・清算を支援する手法としての特定調停スキーム利用の手引き」が公表されました。

廃業支援型の特定調停スキームは、特定調停手続の活用により、事業の継続が困難で金融機関に過大な債務を負っている事業者について、経営者保証に関するガイドラインの適用により保証債務を処理することも含めて、債務免除を含めた債務の抜本的な整理を行い、かかる事業者を円滑に廃業・清算させて、経営者や保証人の再起支援等を図る手続きです。

(引用:日本弁護士連合会:事業者の廃業・清算を支援する手法としての特定調停スキーム利用の手引き)

先程も書いたように、債務者企業が時価ベースで債務超過の場合には、特別清算手続きまたは破産手続きによって会社を消滅するしか方法がなく、破産を採用しようとしても、裁判所への予納金を賄うことができず、破産できないケースがありました。

また、破産手続き、もしくは特別清算手続きを選択した場合には、主債務者である債務者企業を処理することはできますが、保証人については「経営者保証に関するガイドライン」を活用した特定調停で保証債務に係る債務整理手続きをする他なく、特別清算手続きと特定調停手続きという別個の2つの手続きを併用せざるを得ず、両債務者の一体的処理が出来ないという手続き上の問題が存在していました。

さらに、廃業は会社組織に限った話ではなく、個人事業主でも廃業は切実な問題であるわけですが、特別清算手続きは、株式会社にだけ認められた手続きであって、個人事業主等が利用できないという問題点も抱えていました。

こういった問題点をすべて解消するような新しい廃業支援制度として生まれたのが、廃業支援型特定調停です。

廃業支援型特定調停によれば、主債務者と保証人の債務を一体として処理する手続きが可能となり、その際に「経営者保証に関するガイドライン」を活用することによって、破産や特別清算によって処理した場合に比べて、保証人である経営者に資産を残しやすくなるメリットがあります。

地域経済活性化支援機構(REVIC)による特定支援

REVICによる特定支援とは、経営者保証の付いた債権等をREVICが金融債権者(銀行等)から買い取り、債務者企業の金融債務と経営者個人の保証債務を一体で整理する手続きをいいます。

廃業したいのに廃業できない事業者が円滑に退場できるようにして、事業者が再び起業にチャレンジすることを促したりする手続きです。

この制度も保証人である経営者の手元に資産を残すことができる可能性があり、再度起業にチャレンジする機会を持つことも可能になった、日本の経済活性化を企図した手続きとなります。

経営者の個人保証の取り扱い

経営者の個人保証の取り扱い中堅・中小企業経営者の大きな悩みのひとつに個人保証の問題があります。
日本では銀行などから融資を受ける場合には必ず経営者の個人保証を必ず求められます。
経営者側も日本のあたりまえの商慣行として捉えており、保証人として署名押印する手続きを経て融資を受けますよね。

ところが海外ではどうかというと、特に欧米ではこんな商習慣などなく、もし銀行が融資先である会社の経営者に対して、経営者の個人保証を求めたとすれば、「有限責任制度のメリットを受けたくて株式会化しているのに、なんで無限責任を負うことになる保証人なんかにサインしなければならないのか。」と一蹴されてしまいます。

さて、この経営者による個人保証は、事業が順調である時には顕在化しませんが、事業の先行きが怪しくなって、いざ廃業しようとする時に、途端に大きな悩みの種となって経営者の眼前に現れます。
もし廃業した場合には、保証人は保証債務を履行することによってその有する資産を失うことになり、担保提供していた自宅もなくなることになるので、廃業する決心もなかなかつかず、ズルズルと古いビジネスを継続すせざるを得ず、無駄なお金と時間を費消しまうことになります。

また、廃業とまでいかないまでも、中堅・中小企業がビジネスの構造転換に取り組む場合に、ケースによっては金融機関等による債権放棄を受けることができる可能性がありますが、その場合に、経営者自身を含めた保証人への保証債務の履行の問題があるので、債権放棄してもらうことにも及び腰になることもあるでしょう。

このように、経営者の個人保証の問題は、もはや価値を生まなくなった事業に市場から撤退してもらって新陳代謝を促すという効果を持つ廃業を先延ばしにして市場を非効率化し、再生型の事業再生に取り組む場面では、債権放棄を促して過剰債務を削減し、価値のある事業を後世へ残すといった市場の効率化を妨げてきたのです。

そこで、抜本的な事業再生や廃業支援を促進するため、「経営者保証に関するガイドライン」とそのQAが策定・発表され、平成26年2月1日から施行されており、連帯保証債務の整理(債務免除)は従前に比べ比較的受けやすい時代になりました。

廃業を選択した場合には、経営者保証ガイドラインを活用することで、破産することなく保証債務の整理が可能となったことが大きなメリットであり、またこのガイドラインを利用して保証債務を解除してもらった場合には、信用情報機関に登録されることもないので、再起が図りやすいこともメリットのひとつでしょう。

事業再生と経営者保証との関係については、下記の記事を参考になさってください。

廃業しても何度でもやり直せる時代

廃業しても何度でもやり直せる時代廃業を進めるにあたっては、従来であれば破産や特別清算を選択するしかなかった実質債務超過の債務者の場合でも、廃業支援型特定調停制度を使うことによって、私的整理の枠内で主債務者と保証債務を一体の手続きとして処理することが可能となり、経営者保証に関するガイドラインに則ることで、廃業後の生活のために一定の資産を残せる可能性がひらけたと言えます。

これまでのように破産や特別清算を考えるのではなく、まずは廃業支援型特定調停を考えてみるべきではないでしょうか。

経営者が保証債務によって破産することなく、一定の資産を残せる可能性への道が開けたなんて、なんと素晴らしい手続きではありませんか。
事業のアイデアを豊富にお持ちの方には、1度や2度の失敗にめげずに何度でもトライしてもらって、新たなイノベーションでもって世の中を変えることに挑戦してもらいたいものです。

特定調停の相談は、事業再生を専門とする弁護士にご相談ください。
事業再生における弁護士の役割については、下記の記事を参考になさってください。

事業再生に取組むにあたって相談するべき専門家の選び方については、下記の記事を参考になさってください。

中小企業再生支援協議会のメリット、デメリットについては、下記の記事を参考になさってください。