早期経営改善計画とは何か?【最大20万円まで補助金が使えます】

早期経営改善計画書を作成してみないかと銀行さんから提案を受けた。
資金繰り管理や採算管理の手法を外部の専門家が補助金を使って教えてくれるようだ。

当社は、創業時から営業主導で会社を経営してきたが、よく考えたら資金繰り管理や採算管理なんて全くできていない。
銀行さんとの面談でも、資料が出せなくて恥ずかしいしな。
こういった採算管理の手法を採り入れたら、早期にビジネスの変調もわかりやすくなるみたいだし、当社もそろそろ経営管理の面もしっかりやっていかないといけないな。

多くの会社が営業主導で事業を始めて、ある程度の規模になってきたら初めて経営管理の重要性に気付きますよね。
この記事では、そういった会社を対象とする早期経営改善計画の策定事業についてご説明しますね。

本記事は、中堅・中小企業の事業再生に関わって20年以上、200社以上の再生案件に関わって、マーケティングと管理会計と組織再編の力で再生に導いた事業再生のプロである公認会計士が書きました。

早期経営改善計画の策定支援とは何か?

早期経営改善の策定支援とは何か?中小企業・小規模事業者においては、資金繰り管理や採算管理、さらには今後の事業の発展に向けての課題の設定など、ビジネスにといっては基本的なことができていないケースが散見されます。

製造や営業に人的資源がさかれて、管理部門に対する手当はどうしても手薄になってしまうのが、多くの中小・小規模事業者の宿命です。

しかし、損益管理などの管理システムを持たないと、会社のビジネスに変調が来した場合に、早期に気付けないという大きなデメリットがあることになります。

このような経営面での課題を外部専門家と一緒になって探し出して、改善方法を見つけ出し、取引金融機関もそういった取組を後押しすることで、事業者の早期の経営改善に取り組む制度です。

つまり、中小企業・小規模事業者の経営改善への意識を高めるために、認定支援機関による経営改善計画策定支援事業のスキームを活用し、中小企業・小規模事業者等が基本的な内容の経営改善(早期経営改善計画の策定)に取組むことにより、平常時から資金繰り管理や採算管理が行えるよう支援を行い、問題点の早期発見を促すものです。

国としても、中小企業が今後発展していくために、まずは資金繰り管理や採算管理などの経営の基本的な部分での改善を進めることが最低限必要であり、金融機関の協力を得ながらそのあと押しをしている制度ということができます。

また、採算管理等の管理システムを構築することで、事業に変調が来した場合にこれを早期に数値の変動によって発見しやすくし、事業再生や経営改善などにも早期に着手することも可能になります。

さらに、金融庁が事業性評価の重要性を唱えて久しいですが、事業性評価の推進のためにも、金融機関には、融資先に対してコンサルティング機能を発揮することが国の基本的な方針として求められていることから、中小企業の経営改善に対しては外部専門家である認定支援機関と一緒になって、融資先の早期の経営改善に前向きに取り組んでくれることが期待されているものです。

この早期経営改善計画の制度を活用した場合には、上限を20万円として、事業者の負担の2/3が補助されます。(金額は消費税込であるという点はご注意ください。)

つまり、税込30万円までであれば、そのうち2/3の20万円が補助されるため、実質10万円の負担で、認定支援機関である外部専門家などのサポートを受けながら、今後の事業を発展させるために必要な課題の設定、資金繰り管理や採算管理、早期の問題点の発見、事業計画の策定のサポートが受けられるものです。

こちらが中小企業庁からダウンロードできる早期経営改善計画の策定支援事業のパンフレットになります。

(注):認定支援機関
経営に関する専門知識や実務経験が一定レベル以上の者に対して、国が認定する公的な支援機関のことを指します。具体的には、商工会や商工会議所など中小企業支援者のほか、金融機関、税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁護士などが認定されています。

認定支援機関について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。

対象となる事業者

対象となる事業者早期経営改善計画の策定支援の対象となる事業者は、中小企業・小規模事業者であるとともに、以下の3つの要件を満たしていることが必要となります。

①資金繰り管理や採算管理などの基本的な内容の経営改善の取り組みを必要とする事業者。

②認定支援機関である外部専門家の支援を受けることで、資金実績・計画表やビジネスモデル俯瞰図などの早期の経営改善計画を策定し、金融機関(メイン銀行、準メイン銀行)へ提出することで、今後の自社の経営について見直す意思を有する事業者。

③過去に中小企業再生支援事業または、経営改善計画策定支援もしくは早期経営改善計画の策定支援を利用したものを除く。

早期経営改善計画と経営改善計画とのちがい

早期経営改善計画と経営改善計画とのちがい従来の経営改善計画は、逼迫した資金繰りを改善するために、金融機関から返済条件を緩和してもらうなどの金融支援を受けることを目的として、金融機関調整を行う目的で策定される、いわば本格的な経営改善計画です。

一方、早期経営改善計画は、いまだそのような事態には至っておらず、したがって金融支援を受けることを目的とはしないで、早期から自社の経営を見直すための資金実績表や資金計画表、ビジネスモデル俯瞰図などの基本的な計画を策定して、金融機関に提出するものであり、今後の自社の経営を見直すことを主眼に置くものです。

金融機関からすれば、積極的に管理体制の見直しを図って、経営の結果を見える化してくれて、事業の変調の早期発見を目指す債務者に対してよい印象を持たないはずがありません。
管理体制がなく経営の実態が見えずらい中小・小規模事業者の、事業上の問題点の早期発見につながり、融資のリスクが軽減されることになるからです。

リスケ等の金融支援を求める経営改善計画の策定支援については、下記の記事をご参考になさってください。

ご自分で経営改善計画書の策定を行う場合は、下記の記事をご参考になさってください。

経営改善計画書のサンプル(日本政策金融公庫)の解説は、下記の記事をご参考になさってください。

利用するメリット

利用するメリット

自社の経営の見直しによって経営課題が発見できる

認定支援機関である外部の専門家とともに早期経営改善計画を策定することで、それまで自分では気付くことができなかった隠れた経営課題を早期に発見できる良い機会になりえます。

経営上の問題に気付いていたとしても、その問題に対する課題設定は複数考えられますが、いつも同じ視点でしか物事を俯瞰しない癖がついていると、別の視点からの課題設定などできなくなっています。
そういった外部の専門家を通じた別の視点の課題設定はビジネスを大きく飛躍させるチャンスになりえます。

資金繰り管理や採算管理ができるようになる

認定支援機関による外部専門家の利用によって、これまで社内に根付いていなかった資金繰り管理や採算管理(収益管理)の具体的な方法をご指導いただけるはずなので、資金の流れや資金の過不足を見える化でき、事業上の問題の早期発見につながることで、安心してよりビジネスに注力しやすくなります。

自社の事業を金融機関に知って頂ける良い機会となる

金融機関の担当者等は多忙なため、なかなか1つの融資先の事業について詳しく知ることができる機会を持ち得ません。
そのような中、早期経営改善計画の策定によって、自社のビジネスモデル等を金融機関に認知してもらえる良い機会となりえます。

また、経営の実態が見えずらく融資リスクの高かった債務者が数値管理を実施することで、事業上の問題点の早期発見を可能とし、リスクが軽減されるため融資も実行しやすくなります。

利用の流れ

利用の流れ

外部専門家である認定支援機関への相談

経営改善計画策定支援事業の担い手である、外部専門家の認定支援機関に相談し、本制度の概要の説明を受け、会社の概況を説明し、今後の経営改善の基本的方向性についてコンセンサスをとります。

また、金融機関(メイン銀行、準メイン銀行)へ説明に伺い、早期経営改善計画に取り組む旨を報告しておきましょう。

認定支援機関の選定については、中小企業庁のウェブサイトを参考にしながら、下記の記事を参考にしつつ選ばれるのが良いと思います。

中小企業庁「認定経営革新等支援機関検索システム」

認定支援機関について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。

相談するべき専門家の選び方については、下記の記事をご参照ください。

利用の申請

中小企業・小規模事業者は、「経営改善支援センター事業利用申請書(早期経営改善計画)」に必要事項を記載し、経営改善計画策定支援を実施する外部専門家である認定支援機関との連名で、経営改善支援センターへ提出するとともに、金融機関から事前相談書を入手し同センターに一緒に提出します。

金融機関が認定支援機関として当該計画の策定への関与を希望する場合には、申請の連名で加わることも可能です。

その後、経営改善支援センターにおいて申請書の内容が確認され、申請が適切と判断された場合は、外部専門家にその旨が通知されることになります。

経営改善計画の策定支援と金融機関への提出

中小企業・小規模事業者は外部専門家である認定支援機関の支援を受けて早期経営改善計画を策定します。

費用支払の申請と支払決定(早期経営改善計画の策定に対する費用)

中小企業・小規模事業者は、「経営改善支援センター事業費用支払申請書(早期経営改善計画)」に必要事項を記載し、外部専門家である認定支援機関と連名で経営改善支援センターへ提出します。

また、この時に、金融機関へ早期経営改善計画を提出したことを確認できる書面(金融機関の受取書等(普段の業務で使用しているもので可)を添付することが必要です。

そして、経営改善支援センターが早期経営改善計画と支払申請書の内容を確認し、申請が適切と判断された場合は、外部専門家に支払申請の結果および支払予定額、支払予定日が通知されることになります。

その後、経営改善支援センターから外部専門家に対して、早期経営改善計画策定の費用の3分の2(上限20万円)が支払われることになります。

モニタリング

早期経営改善計画にもとづいて、外部専門家である認定支援機関によるモニタリングを受けます。
モニタリングにおいて、認定支援機関は、計画にもとづいて経営改善に向けて適切なアドバイスをすることが求められます。

費用支払の申請と支払決定(モニタリングに対する費用)

外部専門家である認定支援機関は、計画の実施状況について「モニタリング報告書」を作成するとともに、「モニタリング費用支払申請書(早期経営改善計画)」を作成し、経営改善支援センターこれらをまとめて提出します。

そして、経営改善支援センターが報告書と申請書の内容を確認し、申請が適切と判断された場合は、外部専門家に支払申請の結果および支払予定額、支払予定日が通知されます。
その後、経営改善支援センターから外部専門家に対して、モニタリング費用の3分の2(上限5万円)が支払われます。

ただし、早期経営改善計画の策定とモニタリングを合わせて上限が20万円となっており、早期経営改善計画の策定で20万円の補助を受けた場合には、モニタリング費用の補助を受けることはできないこととなっています。

事業再生に取組むにあたって相談するべき専門家の選定については、下記の記事を参考になさってください。

事業再生コンサルティングの内容については、下記の記事を参考になさってください。

経営改善計画書と並行して策定するべき経営力向上計画については、下記の記事を参考になさってください。