認定支援機関で事業再生うまくいく?【適切に選ばないと失敗します】

どんどん売上が落ちてきてるのに、どのように対処すればいいか全くアイデアが浮かんでこない。
どうも最近は昔と違って経営環境ががらりと変わってしまったような気がして、どのように取り組んでいけばいいのかわからないというのがホンネなんだよね。
そんな状況だから、銀行に相談したら、認定支援機関(経営革新等支援機関)を使って事業再生に取り組んでみたらどうかと打診された。

事業再生に取り組む決心はできたのだけれど、認定支援機関って初めて聞く名前だから、ググってみたら、なんだかたくさんの専門家が登録しているみたいなんだな。
中でも税理士さんの登録が圧倒的に多いみたいだ。
うちの税理士に今後のうちのビジネスのこと相談しても、「それは税理士の仕事ではなくて社長の仕事ですよ!」と切り返されたし、そもそも税理士に事業の立て直しなんかできるのかな・・。

このように、認定支援機関についてよくわからないとお悩みの経営者の方は多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、認定支援機関とは何か、どんな専門家が登録していて、実際のところどんなサポートを受けることができるのかについて詳しく説明しますね。

本記事は、中堅・中小企業の事業再生に取組んで20年以上、200社超の事業再生の案件に関与して、管理会計とマーケティングと組織再編の力で再生に導いた、事業再生のプロである公認会計士が書きました。

事業再構築補助金に採択される方法については、下記の記事を参考にされてください。

認定支援機関とは何か?

認定支援機関とは何か?認定支援機関(経営革新等支援機関)は、税務、会計、金融や財務等の専門知識や実務経験が一定レベル以上の者に対して国が認定する公的な支援機関であり、中小企業や小規模事業者が安心して経営相談等が受けられるため創設されたものです。

近年、デジタル・テクノロジーの開発が進み、生活者の嗜好も大きく変化・多様化する中で、中小企業が直面する経営課題も複雑化、多様化していることに鑑み、中小企業支援を行う支援事業の担い手の多様化・活性化を図るため、2012年8月30日に「中小企業経営力強化支援法」が施行されました。
その中で、 中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う認定支援機関(経営革新等支援機関)を認定する制度が創設されました。

認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援について実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を、経営革新等支援機関として認定することにより、中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するもの、とされています。

(出典:中小企業庁)

この記載になるように、経営革新等支援機関等として認定されるための専門性は、「税務、金融及び企業財務に関する専門的知識と支援に関する実務経験が一定レベル以上」としており、旧来型の士業にその中心的役割を担わそうとしています。

さて、本制度の目的である「中小企業の直面する経営課題の複雑化・多様化に対処できる担い手」として、これら旧来型の士業がふさわしいのかと言えば、全く的外れです。
どこかの業界団体の陳情を受けて、このような「専門家の専門性」を規定したのではないかと勘繰りたくもなるというものです。

認定支援機関に相談できる主な内容としては以下のものが掲げられています。

  • 創業支援
  • 事業計画作成支援
  • 事業承継
  • M&A
  • 生産管理・品質管理
  • 情報化戦略
  • 知財戦略
  • 販路開拓・マーケティング
  • 人材育成
  • 人事・労務
  • 海外展開
  • BCP作成支援
  • 物流戦略
  • 金融・財務
  • その他

後で見ますが、認定支援機関に登録している専門家の多くは税理士ですが、税理士に上記に記載のある「相談内容」のうち、実際に相談を受けてサポートできるかと言えば、ひな形の存在する「事業計画作成支援」の形式的策定程度であろうかと思います。

その他の「相談内容」はほとんどの税理士にとっては全くの専門外なので、相談したとしても、まともなサポートはしてもらえないと考えておいたほうがよいと思います。

税理士の有する知識とスキルについては、下記の記事を参考になさってください。

誰でも認定されるのか?

認定支援機関は誰でもなれるのか?認定支援機関として認定されるには、「専門的知識を有していること」と「実務経験があること」の2つの基準を満たすことが必要とされます。

まず、専門的知識を保有していることを証明するには、次の条件のいずれかを満たしていることが必要です。

  • 税理士法人、税理士、弁護士法人、弁護士、監査法人、公認会計士、中小企業診断士の資格を持つもの、または金融機関である。
  • 経営革新計画等の策定に支援者として関わった後、それらの計画に対する認定を3件以上受けている
  • 中小機構で指定された研修を受講し、合格している

次に実務経験については、次のどちらかを満たす必要があります。

  • 中小企業・小規模事業者に対する支援に関し、3年以上の実務経験があり、かつ経営革新等支援業務に係る1年以上の実務経験がある
  • 中小機構にて指定された実践研修を受講し、試験に合格している

例えば、税理士や公認会計士の場合、中小企業への税務相談、税務申告や管理会計システムの構築、内部統制システムの構築などが実務経験に該当しますし、弁護士であれば、法律相談などが実務経験に該当します。

なお、専門的知識と実務経験の要件を満たしていても、実際の認定にあたっては次の2点も確認されることになります。

  • 支援業務を行う上で必要な組織体制(管理組織・人事配置など)・事業基盤(財務状況など)を持っていること。
  • 破産者、反社会的組織の一員、成年被後見人、禁固刑以上の刑執行後5年を経過した者、この4つすべてに該当しないこと。

以上のような認定要件があるので、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士などの有資格者は、申請すればほぼ認定支援機関になることができます。
また、こういった資格を有していなくても中小機構の実施する研修と試験に合格すれば、認定支援機関となれます。

つまり認定支援機関になるためのハードルはそう高くはないということであり、様々なスキル・レベルの認定支援機関が入り混じった玉石混交の機関であるということができます。

全国の認定者数(2020年5月20日現在)

都道府県名 税理士 公認会計士 弁護士 中小企業診断士 民間コンサル 商工会 商工会議所 その他 合計
1 北海道 669 65 46 23 253 180 19 46 1,301
2 青森 122 11 2 6 3 43 7 8 202
3 秋田 93 4 3 3 11 61 2 10 187
4 岩手 123 6 3 4 7 26 18 7 194
5 宮城 317 39 25 19 21 70 3 10 504
6 山形 118 10 0 9 7 37 7 8 196
7 福島 246 14 3 13 15 91 7 14 403
8 茨城 351 21 17 19 13 57 8 16 502
9 栃木 294 25 13 13 17 36 11 7 416
10 群馬 375 15 11 26 18 45 8 9 507
11 埼玉 1,188 92 41 79 44 66 17 33 1,560
12 千葉 746 76 25 47 27 41 13 21 996
13 東京 5,923 1,000 739 220 341 31 6 157 8,417
14 神奈川 1,515 146 69 95 68 20 22 44 1,979
15 新潟 378 34 36 20 13 105 13 9 608
16 山梨 166 8 3 16 7 24 2 8 234
17 長野 385 32 28 13 18 93 30 19 618
18 静岡 733 72 13 31 39 68 16 17 989
19 富山 209 9 0 7 8 31 9 6 279
20 石川 268 13 7 5 9 27 6 6 341
21 岐阜 406 22 12 6 15 47 15 5 528
22 愛知 1,912 156 114 55 74 58 32 14 2,415
23 三重 356 14 5 4 10 30 13 6 438
24 福井 155 12 8 6 4 14 8 4 211
25 滋賀 218 19 6 21 8 0 7 31 310
26 京都 781 84 41 26 24 21 13 18 1,008
27 大阪 3,464 382 188 84 117 17 25 30 4,307
28 兵庫 1,240 112 40 53 37 29 20 22 1,553
29 奈良 232 20 16 18 37 34 1 10 368
30 和歌山 185 8 6 6 7 31 7 4 254
31 鳥取 72 3 8 4 7 22 3 13 132
32 島根 71 5 9 1 8 52 8 8 162
33 岡山 334 21 25 5 17 21 13 7 443
34 広島 628 43 52 19 34 89 14 18 897
35 山口 223 13 12 17 12 52 10 10 349
36 徳島 99 7 6 9 5 24 5 6 161
37 香川 188 13 12 4 8 16 3 7 251
38 愛媛 218 20 4 15 10 24 4 6 301
39 高知 90 6 3 5 4 26 6 6 146
40 福岡 1,049 141 73 81 53 78 21 23 1,519
41 佐賀 107 9 3 10 2 30 8 10 179
42 長崎 184 8 14 14 6 22 5 8 261
43 熊本 352 26 15 11 7 50 9 9 479
44 大分 180 11 10 11 8 47 9 6 282
45 宮崎 181 19 14 6 3 0 8 48 279
46 鹿児島 274 20 11 11 12 86 11 9 434
47 沖縄 164 15 7 15 14 35 4 12 266
合計 27,582 2,901 1,798 1,185 1,482 2,107 506 805 38,366

全国に約38,000の認定支援機関が存在しています。
そして、その大半を税理士が占めており、全体の約72%が税理士または税理士法人ということになります。
また、これら以外にも認定を受けている認定支援機関としての金融機関があります。

事業再生に取組むにあたって、これらの専門家の誰に相談するべきかについては、下記の記事を参考になさってください。

事業再生の専門家に必要な知識とスキルについては、下記の記事を参考になさってください。

事業再生には不向きです

認定支援機関の専門性認定支援機関の多くは士業であり、その約72%が税理士ですが、彼らは税法という法律の専門家であり、会計の専門家でもなく、経営の専門家でもありません。
また、公認会計士は会計と監査の専門家であり、弁護士は法律の専門家であって、どちらも経営の専門家ではありません。

世の中の多くの中小企業経営者の方が、税理士、公認会計士は経営の専門家であると勘違いされていますが、ごく一部の例外を除いて、ほぼすべての税理士と公認会計士は経営などわかりません。
なぜならマーケティング等の専門科目をしっかり学ぶ機会がなかったからです。

また、認定支援機関となっている中小企業診断士の多くいます。
中小企業診断士は会計や税務に関する知識とスキルを身に付けているわけではないので、金融機関の求める数値計画を作成することができません。
中小企業経の経営に関するアドバイザーとしては、とても有効な有資格者であると思いますが、ウェブ・マーケティングやデジタル・マーケティングまで含めた現代的なマーケティングを理解している中小企業診断士となると、その人数は極めて少なくなります。

認定支援機関に登録している有資格者は各々その専門性が偏っているのが普通ですので、マーケティングや戦略論等の事業再生に必須の知識とスキルを広く身に付けた専門家はほぼいないという事実は、認定支援機関を利用する前には知っておく必要があります。

単に金融機関の求めるリスケのための再建計画書や、新規融資のための再建計画書の作成を外注するだけのつもりならば、認定支援機関に登録している一般の税理士や公認会計士に依頼しても問題はないでしょう。

ただ、これを契機に自社のビジネスをしっかり見極めて、あるべき方向へ指導してもらいたいとお考えならば、認定支援機関に登録している一般の税理士や公認会計士に依頼するのではなく、マーケティングに精通した公認会計士に依頼するか、そうでなければ、認定支援機関の中から専門分野の異なる複数の専門家を選ぶことが必須になります。

マーケティング思考については、下記の記事を参考になさってください。

事業再生を成功させるポイントについては、下記の記事を参考になさってください。

事業再生アドバイザーについては、下記の記事を参考になさってください。

認定支援機関の会計士や税理士が広く進めている管理会計の実態については、下記の記事を参考になさってください。