経営改善と事業再生、どう違う?【注意:全く別物です!】

先代から受け継いだ会社の事業を改めて見直して、昔のような儲かる会社にしたいんだけど、外部の専門家に頼む場合、誰に頼んだらいいのか全く見当がつかないな。
ググってみたら「経営改善コンサルタント」と「事業再生コンサルタント」なんてよく似た言葉が出てくるんだけど、この2つの言葉がどう違うのかもよくわからないし。

似ているけれども、よく考えてみたら意味する内容が全く違うってこともありえますよね。

そこで、この記事では、経営改善と事業再生の言葉の違いについて考えてみたいと思います。
この記事を読むことで、「経営改善」と「事業再生」の違いがよく理解でき、「経営改善コンサルタント」と「事業再生コンサルタント」のどちらに仕事を依頼するべきかがよく理解できます。

本記事は、中堅・中小企業の事業再生にたずさわって20年以上、200社超の事業再生案件に関わって、マーケティングと管理会計と組織再編の力で再生に導いてきた事業再生のプロである公認会計士が書きました。

経営改善と事業再生のちがい

経営改善と事業再生のちがい経営改善という言葉は、英語に訳すと「Management Improvement」となります。
「Improvement」という言葉は「改善」という意味ですが、この言葉の本質は「悪い所をなくして質を上げる」ということになります。

つまり現在のやり方や方法そのまま踏襲することを前提として、その枠内で悪い点を見つけ出して改善して質を高めることが「改善」の本質的な意味ということになります。

そして、経営改善は、経営についての改善ということですから、現在の経営の方法や方向性はそのままとして、その中で業績のボトルネックになっている悪い点を見つけ出して、そこを改善することで業績を上げることを意味することになります。

つまり、経営改善は、戦略や事業構造は従来通りに踏襲したままで、その枠内でオペレーション効率を上げていくこと意味するものです。

一方、事業再生という言葉は、英語に訳すと「Turn Around=ターン・アラウンド」となります。
この言葉の本来の意味は「方向転換する」というものであり、ビジネス用語として遣うと、「赤字から黒字へ転換する」、さらには「事業再生」という意味になります。

この言葉は、改善と異なって現在のやり方や方法を所与とせず、それさえも懐疑の目をもって見つめて、全く違う方向へ転換することさえも含意する言葉です。
経営に即して言えば、戦略を転換する、市場を再定義する、扱っている製品やサービスのカテゴリーを再定義する、生活者の頭の中のポジショニングを変えるなど、ビジネスの構造そのものさえ必要とあらば大胆に変革することを含んでいます。

このように「経営改善」と「事業再生」という言葉は、似ているような気がしますが、全く次元の異なる言葉だということができます。

事業再生の論点については、下記の記事を参考にされてください。

2つの言葉を遣うべき場面のちがい

2つの言葉を遣うべき場面のちがい以上のような言葉の意味の違いから、経営改善と事業再生という言葉が遣われる場面も通常は異なってきます。

営改善という言葉は、黒字は出ているものの、さらなる業績アップをオペレーション効率の改善を通じて目指している会社に対して使われることが多く、一方、事業再生という言葉は、赤字から黒字へ転換するという意味から、赤字の会社が黒字化を目指す場合に遣われることが多いでしょう。

黒字の会社がさらに業績アップを目指す場合には、戦略を大きく変えたり、ポジショニングを変えることは逆にリスクが高いので、現状の戦略やポジションングを前提として、工場ラインの管理の精度をTOCによって上げるとか、営業マンの営業効率をあげるなどに注力することになります。
これはまさに経営改善に該当します。

一方、赤字の会社は、工場ラインの効率化、営業の効率化を図る前に、会社そのものの向かうべき基本的な方向性として戦略が、市場の状況や競争環境と大きくずれてしまっていることがとても多いので、戦略やビジネスモデルそのものをまずは見直すところから入らねばならないのです。

このような赤字の会社のケースで、経営改善に代表されるような工場のラインの効率化や、おもてなしの心の発揮などを実施しても、業績が大きく変わることはありません。

このように、経営改善と事業再生という言葉は、その本質的な意味が全く違うので、異なる文脈で遣われるべき言葉なのです。
ところが、日本では全く異なるこの2つの言葉をほぼ同じような意味で遣うことがとても多く、専門家の中でも言葉の意味の違いをしっかり理解して遣う人がとても少ないのが現状です。

事業再生アドバイザーについては、下記の記事を参考になさってください。

事業再生コンサルティングの内容については、下記の記事を参考になさってください。

再生実務の多くは経営改善でしかない理由

事業再生の多くは経営改善でしかない理由日本では、多くの専門家(税理士、公認会計士、弁護士等)が事業再生だと思って実施している仕事の内容が、残念ながら、実は経営改善にとどまってしまっています。

その経営改善も固定費の圧縮とか、遊休資産の売却程度に収まってしまっていて、本来の意味での経営改善、つまりはオペレーション効率の改善の観点からの指摘、指導もすらできていないことのほうが圧倒的に多いのが現状です。

オペレーションの改善を図って単位時間当たりのスループットをいかに上げるかなどという観点から、経営改善を指導できる専門家は、しっかりオペレーションを学んでいないとできるものではありません。

多くの専門家の実施する事業再生がなぜ経営改善(経営改善とも言えないケースがとても多いですが)にとどまってしまうかというと、話は単純で、事業再生を実施するための知識とスキルに欠けているからです。

事業再生を行うためには、つまり赤字の会社を黒字化するためには、戦略転換やポジショニング転換を図らなければならないことがとても多いわけですが、そもそも戦略立案能力がなかったり、ポジショニングを見直してリ・ポジショニングすることがスキルとして身に付いていなければ、それは全く不可能なことなのです。

したがって、事業再生は経営改善に比べると圧倒的に難度の高い仕事であると言えます。

中小企業庁のホームページへ行くと、「経営革新等支援機関(認定支援機関)」に登録してる税理士や公認会計士など登録機関の氏名やアピールポイントなどを見ることができますが、そこでは多くの有資格者が事業再生に〇を付けています。

こういった先生方は、形式的な経営改善計画を策定することが事業再生であると勘違いされていらっしゃることがとても多いので、本来の意味での事業再生=ターンアラウンドを実施できる有資格者の先生はほぼいらっしゃらないと思います。

各々の専門分野の学びを続けることで手いっぱいかもしれませんが、社会のインフラとしての会計専門家等の先生方には学びを深めて頂きたいと切に願います。

認定支援機関(経営革新等支援機関)については、下記の記事を参考になさってください。

ターンアラウンドの本来的な意味については、下記の記事を参考になさってください。

事業再生が実施できるかどうか見定めるポイント

事業再生が実施可能かどうか見極めるポイントもしあなたが経営改善でなくて事業再生に取り組むことを考えていらっしゃる経営者であるならば、銀行や中小企業再生支援協議会から紹介される税理士や公認会計士などの外部専門家に一つだけ質問をしてみれば、再生実務に向けてしっかりとしたアドバイスをしてもらえるかどうかがわかります。

その質問とは、「あなたはマーケティングに造詣が深く、戦略立案ができますか?」です。

ごく一部の例外を除き、税理士や公認会計士はマーケティングなど学んでいません。
また戦略についても、公認会計士ならば戦略論は学んでいる者はとても多いのですが、戦略立案ができる者は一部の例外を除いてほとんどいません。

マーケティング力と戦略の立案能力は、事業再生にとって必須の知識とスキルであるので、これがないと事業再生の仕事を遂行することは全く不可能です。

この1つだけの質問をするだけで、あなたの事業再生への取り組みが本当に意義あるものになるのか、それとも単にリスケをお願いするためだけの、または新規の融資をお願いするためだけのセレモニーと化すのかが事前にわかります。

残念ながら、この質問をした結果、ほぼ100%に近い確率で、「No」というお答えを頂くことになろうかと思います。
その場合には、銀行が求めるリスケのための再建計画書か、新規融資のための再建計画書を作ってもらうだけの外部専門家だと割り切って頂いて、事業再生に関する適切なアドバイスをもらうことは諦めて、自分で自分のビジネスを見直して頂くしかないのです。

しかしどうしても良いアドバイスをもらいたいんだという経営者の方に朗報です。

もしあなたが経営改善でなくて事業再生に取り組むことを考えていらっしゃる経営者で、銀行や中小企業再生支援協議会から紹介された税理士や公認会計士などの外部専門家では納得がいかないような場合には、当社までご連絡頂ければ、私が主催する私塾の「問題解決倶楽部」で、マーケティングや戦略立案などのコンサルティング・ノウハウを学んで実戦している税理士や公認会計士の先生をご紹介することも可能です。

もちろん当社も全国対応させて頂いておりますので、当社でも対応は可能です。

まだ、全国的に地域を網羅できているわけではないので、対応不可能な地域もありますが、できるだけ良い外部専門家の先生に出会えるように調整させて頂きます。

事業再生に取組むにあたって、相談するべき専門家の選び方については、下記の記事を参考になさってください。

マーケティング思考については、下記の記事を参考になさってください。

事業再生におけるマーケティングの重要性については、下記の記事を参考になさってください。

事業再生を成功させるポイントについては、下記の記事を参考になさってください。