事業再生で債権放棄を受けられる可能性【結論:非常に低い】

銀行が債権放棄をしてくれたら当社もずいぶんと楽になるのだけれど、返せる当てのない過大な借入金のカットを銀行にお願いしてみてもいいのかな。

でも反対に銀行を怒らせてしまったら、今後の銀行取引ができなくなると困ってしまうけれど・・・

銀行からの借入金が過大になってしまって、返済する当てのないレベルの借入金を抱え込んで困っている経営者の方は、まだまだ多いものと思料いたします。

この記事を読むことで、銀行が債権放棄に応じてくれる可能性がよく理解でき、お互いにとって最適な再建策を策定することを目標とするべきことがよく理解できるようになります。

本記事は、中堅・中小企業の事業再生に取組んで20年以上、200社以上の再生案件に関与して、マーケティングと管理会計と組織再編の力で再生に導いてきた事業再生のプロである公認会計士が書きました。

事業再構築補助金に採択される方法については、下記の記事を参考にされてください。

事業再生で債権放棄を受けられる可能性

事業再生で債権放棄を受けられる可能性2020年の現時点において、事業再生に取組んで金融機関に債権放棄の依頼をしても、受け入れてもらえる可能性はとても低いと言えます。

その理由は、大きく3つあります。

第1に、金融庁の金融行政の大転換が行われてすでに久しく、銀行が積極的に債権放棄まで行って不良債権の削減に取り組むインセンティブが全くない時代だからです。

第2に、日本では2016年以降マイナス金利の金融政策が継続されていますが、今回の新型コロナ・ウィルスの蔓延による経済の停滞・沈下を受けて、今後もマイナス金利政策はしばらく継続される見込みであることから、銀行の収益力の悪化に伴い、貸倒費用等の与信費用に対する予算が計上できないからです。

第3に、債権放棄にはモラル・ハザードがつきものであり、従前から経営者のモラル・ハザードの存在が指摘されてきましたが、そもそも特定の企業に対する債権放棄自体が、銀行のモラル・ハザードではないかという理解が今後銀行業界に共有されると思うからです。

過剰債務に対して債権放棄を受けることができれば、債務者企業はとてもハッピーなのでしょうが、銀行が積極的に債権放棄に応じられない環境に変化した現在、銀行も債務者企業の双方が満足のいく再建計画を立案することが大切な時代になっているのだと思います。

債権放棄とは何か?

債権放棄とは何か?債権放棄とは、債権者の一方的な意思表示により、その有する債権の全部または一部の権利を放棄することによって、債務者の債務を消滅させることをいいます。

債権放棄は、民法上は「免除」と呼ばれるもので、民法519条によれば、「債権者が債務者に対し債務を免除する意思を表示したときは、その債権は消滅する」と規定されています。

このように債権放棄は、債務者の意思にかかわらず債権者の意思のみで債務を消滅させる、債権者の単独行為であるため、冒頭の定義では、「債権者の一方的な意思表示により」としているのです。

債権放棄は、得意先の業況が悪化して、売掛金の回収が実質的に不可能になったような場合に行われることが多いですが、事業再生の場面で、銀行が債務者に対して有している貸付債権の一部を放棄することも含まれます。

半沢直樹に学ぶ債権放棄

半沢直樹に学ぶ債権放棄最近のテレビドラマでも、この債権放棄が大きなテーマになっていたものがありました。

皆さん、よくご存じの「半沢直樹」ですね。
『やられたらやり返す!倍返しだ!』というセリフがすっかり定着したドラマですが、7年間の時を経て、セカンドシーズンが2020年7月19日~9月27日に渡って放映されました。

ファーストシーズンで東京中央銀行内での数々の不正を明らかにした半沢直樹でしたが、子会社の東京セントラル証券へ営業企画部長として出向を命じられました。

東京セントラル証券で、東京中央銀行の融資先の粉飾を見抜いた半沢直樹は、不良債権化する可能性の高かった500億円の追加融資を阻止することで東京中央銀行の窮地を救い、その御褒美に当銀行本部・営業2部の次長に復帰します。

着任早々、大和田取締役(降格されたのだ!)からの推薦で、破綻寸前の帝国航空の再建という難しい超大型案件を頭取から任されることになりました。

同じような時期に、支持率の低迷が大きな問題となっていた進政党・的場一郎内閣が内閣改造を行い、元アナウンサーの白井亜希子を国土交通大臣に任命するというサプライズ人事を行いました。

国土交通大臣の白井は、目玉となる政策として破綻寸前の帝国航空の再建を掲げて、再生タスクフォースを立ち上げるとともに、銀行団への大規模な債権放棄を求めました。

ちなみに、このドラマが想定している帝国航空の事業再生は、会社更生等の法的整理ではなく、債権者である銀行団と債務者である帝国航空との当事者同士の協議でなされる私的整理です。

そもそも当事者同士の協議でなされる私的整理について、政府が債権放棄を要請するなどということはあり得ないわけで、この辺りがフィクションであり、ドラマでしか見ることができないエンターテインメントなわけですね。

半沢直樹は、このあたりについては、「政府が介入する法的根拠は何かあるのか?」と再生タスクフォースの弁護士に噛みついていますが、これはごもっともな話なわけです。

さて、東京中央銀行は帝国航空に対して700億円もの債権を有していましたが、再生タスクフォースが求めてきた債権放棄の金額は500億円でした。

半沢直樹のドラマの原作者は池井戸潤さんですが、彼は元三菱銀行のバンカーでした。
なので、融資実務の現場をよくご理解されていることが、この債権放棄の要請額からもわかりますね。

帝国航空は破綻寸前という設定で、再生タスクフォースから債権放棄を求められていることからもわかるように、その債務者区分は破綻懸念先です。
破綻懸念先の場合には、非保全額の概ね70%程度の貸倒引当金を設定しますが、700億円全額が裸融資だとすれば、700億円X70%=約500億円となり、再生タスクフォースの債権放棄の要請額と一致します。

業況の悪化は急激に生じることは、天変地異やパンデミックの時以外は通常考えられず、徐々に悪化していくのが通例ですから、帝国航空の場合も、前期以前に会計上の措置、すなわち貸倒引当金の設定は済んでいるはずです。

すなわち、破綻懸念先に対する債権として500億円程度の貸倒引当金は設定済みで、会計上の手当てはすでに済んでいるはずなのです。

業務純益の少ない地銀や信用金庫ならば、十分に貸倒引当金の設定をタイムリーに行えないこともあろうかと思いますが、三大メガバンクの一角の東京中央銀行では、帝国航空への会計上の措置が実施されていないことは、実務的には考えられません。

つまりは、帝国航空への貸出債権についてはすでに相応の貸倒引当金を積んでいるのだから、債権放棄を実施したところで追加の損失が東京中央銀行側に生じるわけではないということです。

にもかかわらず、第7話では、大和田取締役と半沢直樹との間で、以下のような会話が展開されます。

大和田「ここは政府に逆らわず、債権放棄を大人しく引き受けるべきだ」

半沢「本気でおっしゃっているんですか?」

大和田「超本気だよ。私だってね、500億なんて大金をみすみすドブに捨てるようなことはしたくないんだよ。そんなふざけたことを認めてたまるか! しかしなぁ、これ以上戦えば、うちも何よりも頭取がもっと深い傷を負うことになるんだ。500億円は和平のための手打ちのカネだと思いなさい。」

ここで大和田取締役は、「500億なんて大金をみすみすドブに捨てるようなことはしたくないんだよ。」と言っています。

帝国航空という破綻懸念先への貸出債権700億円について、貸倒引当金を500億円設定して、前期以前に500億円の会計上の損失をすでに計上済みであるので、ここで同額の債権放棄をしても、貸倒引当金を取り崩せばいいだけの話で、追加の損失は何ら生じることはなく、損益計算書を当期に傷めることはないのです。

でも、大和田取締役は、「500億なんて大金をみずみすドブに捨てるわけにはいかない。」と、基本的に債権放棄に同意することはしてはならないと思っています。

つまり、会計上の手当てとして十分な貸倒引手金を設定済みであり、その上で債権放棄をしても追加的な損失は何も生じることはないにもかかわらず、債権放棄を断固として拒絶するのは、債権放棄をしてしまえば、その金額は損失として確定し、将来帰ってくることがなくなるからなのです。

貸倒引当金を積んだ債権というのは、あくまでも現時点において回収可能性に疑義があるために、旧検査マニュアル(2019年12月廃止)に則って、保守的に債務者区分と債権区分に応じた将来の損失の見積額を控除した債権に過ぎず、実際の損失が確定した債権ではないのです。

したがって、再建が進んで業況が回復し、金融債務の返済も順調に進んで、実質債務超過の解消も見えてきたというような場合には、債務者区分もランクアップして、過去に積んだ貸倒引当金を過大に計上しすぎている状況になるので、貸倒引当金の一部を戻入れて、特別利益(過年度損益調整)で受けて、その期の損益計算書に貢献することもありうるわけです。

ところが、債権放棄に応じて、実際の損失として確定させてしまうと、その損失は永久に帰ってくることはありません。(税効果会計はここでは無視しています。)

したがって、銀行からすると、貸倒引当金を十分積んであることと、債権放棄を実行することは全く次元の違う話であって、貸倒引当金を十分に積んでいるから債権放棄をしても損益計算書は傷まないので問題ないというロジックにはならないのです。

さすがエリートバンカーの大和田取締役(常務から降格!)だけあって、その発言はとても奥深いものなのでした。

ここで書いたようなことを頭で思い描きながら、半沢直樹の第7話を視聴していらっしゃったバンカーの方は多いのではなかったでしょうか。

そして、基本的には債権放棄に応じることには反対の大和田取締役でしたが、政府からの圧力で業務改善命令を受け入れるか、債権放棄に応じるかを天秤にかけた場合には、債権放棄に応じたほうが銀行のためになると判断しているわけです。

余談ですが、それほど業務改善命令は、金融機関にとっては恐ろしいものなのですね。

債権放棄のハードルは高い

債権放棄のハードルは高い半沢直樹のドラマでは、帝国航空という日本を代表する航空会社の事業再生をテーマにしており、法的整理ではなく私的整理での再生を目指している設定の中で、公益性が非常に高い事業でもあり、債務者から債権放棄の要請があってもそれほどの違和感はありません。

ただし、ドラマの設定の政府が介入して債権放棄を求めることに対しては、大きな違和感があるのは先ほども述べたとおりです。

ドラマでは債権放棄が私的整理の枠組みの中で要請されていますが、2020年の現在において、一般の中堅・中小企業が、債権者である銀行に債権放棄を求めても、それは非常にハードルが高いことは理解しておいたほうがいいでしょう。

そのように言い切れるのは、下記の3つの理由があるからです。

金融庁の方針の転換

バブル経済の崩壊の結果、金融機関には莫大な不良債権が存在していることが明らかになり、この処理のために政府は、1999年に金融検査マニュアルを制定し、主要行の不良債権の一掃を目指し、その後地方銀行の不良債権の処理へと進んだわけです。

各行は政府の目指す不良債権の削減目標を達成するために、回収見込みのない債権については債権放棄を積極的に実施し、直接放棄が実施しにくいケースではサービサーや再生ファンドへの債権の売却を通じて間接的に債権放棄を実施し、スピード感を持って不良債権の処理に邁進しました。

その結果、日本経済の存在する不良債権の額は大幅に減少し、日本の金融システムの安定化が図られることとなったわけです。

この時代は、政府が積極的に不良債権の処理を推進していた時代でもあり、銀行も金融庁への報告のための実績づくりのために、債権放棄を実施することにはやぶさかではありませんでした。

この頃は債務者が事業再生の専門家のアドバイスを受けて、銀行へ債権放棄の計画を持ち込んでも、十分に検討してもらえる可能性はあったわけです。

金融検査マニュアルについては、下記の記事を参考にされてください。


このように不良債権の削減という大きな目標の下では、金融検査マニュアルは多大なる貢献をしたわけですが、不良債権比率が大きく低下したような状況の中で、金融検査マニュアルを従前どおり厳格に適用してしまうと、中小企業を中心にして必要な事業資金の調達が困難な局面が多く出てくることとなり、その反動が大きく表出したのが2008年9月に経営破綻したリーマン・ブラザーズに端を発するリーマン・ショックでした。

金融システムに対する不安を背景に世界的な不況に包まれて、日本の中小企業の資金繰り逼迫による倒産が相次ぐ中、政府は2009年に時限立法として金融円滑化法を成立させ、債務者が債務の返済の猶予を希望すれば、金融機関はこれに応じる努力をすべきことを求めました。

この法律は返済猶予に応じることを強制するものではなく、あくまで努力義務を課しただけでしたが、返済猶予等の実績数を金融庁へ報告することの義務を課したことから、実質的には法的強制力を持った法律でした。

2度の延長を経て、2013年3月末をもってこの法律は失効しましたが、金融円滑化法の思想は、金融検査マニュアルに取り込まれることとなって、その後の金融行政の中心となる考え方となりました。

金融円滑化法が大きな影響を持ったのは、債務者のリスケに応じておけば不良債権に該当しないこととしたからです。

金融円滑化法については、下記の記事を参考にされてください。

この頃から、金融庁で頭角を現したのが、その後の2015年に金融庁長官に就いた森信親氏です。
彼は、従来のような不良債権をチェックする金融庁検査を廃止し、銀行が融資先の事業性を評価して積極的に中小企業に必要な事業資金が回るような融資実務の転換を求めました。

森長官は2018年7月をもって金融庁長官を退任しましたが、その考え方は現在の金融庁の基本方針となっています。

そして、2019年12月には金融検査マニュアルが廃止され、金融行政は本格的に事業性評価融資の実務への定着を志向しています。

このような中で、2020年に入ると新型コロナ・ウィルスの感染拡大による経済の落ち込みを受けて、実質的に金融円滑化法が復活しています。
債務者の返済猶予の要請を受けた金融機関がこれに応じておけば、不良債権扱いせずに済むのです。

以上のように、不良債権処理は一段落したとして、経済の活性化を主目的に、中小企業へ事業資金が行き渡るように、あの手この手で対応している現在の金融行政の中では、金融機関に実損を被ってまで債権放棄を実施するインセンティブはない時代なのです。

さらに、もう一つ。
金融庁が2013年頃から金融行政の方針を大転換し、不良債権処理から事業性評価融資へと舵取りを大きく転換したと先程も書きました。

この考え方が銀行に根付くこととなれば、銀行自体がコンサルティング機能を大いに発揮して、債務者企業の事業そのものの構造改革や経営改善を指導することで、収益力の底上げを図って過剰債務となっていた部分を正常的な債務の範囲内に留めおくことも可能となってきます。

一朝一夕にすべての銀行にコンサルティング機能が根付くと考えるわけにはいきませんが、中には大きく効果を発揮している銀行も出てきていますので、債権放棄などの金融支援を行わずとも、事業そのものの再生を通じて収益力をアップさせることで、債権の回収可能性を高める方向へと時代は動いています。

事業性評価融資については、下記の記事を参考にされてください。

このような金融庁の金融行政の方向性からも、今後、私的整理の枠組みの中で債権放棄などに応じる金融機関はほぼなくなるのでしょう。

銀行の業績悪化

バブル経済の崩壊後、経済環境が大きく悪化する中で、1999年2月、日本銀行はいわゆるゼロ金利政策の導入を決定しました。

その後、好景気、不景気の循環の中で、ゼロ金利政策の解除、再実施を繰り返しましたが、2016年2月には、マイナス金利を伴う金融緩和政策を実施し、いわゆるマイナス金利の時代へと突入することになりました。

マイナス金利は、民間銀行が日本銀行への準備預金のうち、法的準備を超える部分に対して金利を支払うことを意味するため、理論的には民間銀行が投資先を求める結果、民間に資金が流れやすくなり、投資が促進され、さらには円安効果から輸出が促進されて、日本経済に対して正の効果をもたらします。

一方、民間銀行では調達金利が貸出金利を上回る逆ザヤが生じ、銀行収益を大きく圧迫し、銀行の業務収益を大きく引き下げる方向へ働きます。

マイナス金利政策が導入されて以降、すでに5年弱が経過しましたが、新型コロナ・ウイルスの蔓延による経済の沈下もあって、日銀がこの政策を解除する目途は立っていません。

このような中、多くの銀行で貸付金利息の大幅な減収で、最終損益が赤字となる銀行も出始めています。(参考:全国銀行の2019年度決算の状況(単体ベース):一般社団法人全国銀行協会)

マイナス金利政策を解除することが難しい経済状況が、今後しばらく継続することが見込まれる中、多くの銀行の収益の減少がさらに加速することが予想され、特に収益の確保が難しくなっている地方銀行を中心にして、与信費用を予算計上することも困難な状況であろうと思われます。

そのような中では、債務者に対して一歩踏み込んだ金融支援である債権放棄などを実施する余力などあろうはずがありません。

モラル・ハザードの問題

モラル・ハザードとは倫理観の欠如した状態をいいます。

ある企業に対して債権放棄を実施したとすると、その情報を聞きつけたその他の債務者企業が、我も我もと債権放棄を求めて銀行に殺到するような状況を指す言葉です。

つまり、法律的にも倫理的にも借りたものは返すという大原則を忘れ、借りて返せなくても、債権放棄をお願いすればいいではないかという、倫理観の欠如が世の中に蔓延するということです。

このようなモラル・ハザードが蔓延すれば、経営者は他人の資金で過度にリスクの高い投資を行ったり、会社資金を私消に充てたりと放漫経営の温床になる可能性はとても高くなります。

また、新たな資金調達をする場合に、過去の債権放棄に応じた実績を持つ銀行が優先的に選ばれたりすることも、モラル・ハザードの一例でしょう。

債権放棄という金融支援を実施する場合には、このような一般的なモラル・ハザードの問題が想定されるので、銀行はその実施を躊躇するわけですが、あまり世の中で言われていないような種類のモラル・ハザードがあると私は考えています。

それは、銀行がある特定の業種に属する企業に対して債権放棄を実施することは、その業種に属する他の企業に対して不良債権を飛ばしていることと同義であるということです。

債権放棄を受けた債務者企業は、債務の負担がなくなったことで、キャッシュフロー的に大きく改善します。
財務バランスも良くなって数年すれば銀行取引も正常化し、新たな投資資金の調達も可能となります。

資金的に楽になったことで研究開発投資も行えるようになり、新製品のための新規投資を行うことも可能となります。
こういったことをやらないまでも、製品の価格を下げて価格競争をすることに乗り出すかもしれません。

債権放棄を受けた債務者企業のこういった活動の変化は、同じ業界に属するライバル企業へ大きな影響をもたらします。

業界全体への需要に変化がなければ、身軽になった企業の躍進は、その他の同業者の業績を引っ張る可能性がとても高く、その企業の新製品開発や低価格化によって顧客を奪われることになる可能性もとても大きいわけです。

つまり、債権放棄を受けた企業の再生は、同業者の業績の足を引っ張ることに繋がりやすいので、それを実施した銀行からすれば、融資先内での不良債権飛ばしを行っているに過ぎません。

このような状況は、融資先を選別して特定企業を優遇してしまうことであるので、その意味においてモラル・ハザードの状況であるわけです。

ある債務者企業への債権放棄という優遇策は、業界内の他の企業の犠牲の上に成り立っていると言えなくもないのです。

このようなマクロ的な視点を銀行関係者が持つことで、さらに債権放棄などという金融支援は実施しにくくなると私は考えています。

その他の再建策を考えましょう

その他の再建策を考えましょう以上のようなことから、2020年の現代においては、銀行が債務者企業に対して債権放棄という金融支援策を私的整理の枠組みの中で採用することは非常にハードルが高いと言えます。

事業再生の専門家に相談して、債権放棄というハードルの高い再建策を策定して金融機関に相談するよりも、金融機関の損失をできるだけ抑えつつ、御社にもメリットのある再建策を講じるのが適切な時代でしょう。

金融支援の方法については、下記の記事を参考にされてください。

まずは、事業そのものの収益力を高めることです。
事業のポジショニングをずらしてみたり、商品やサービスのコンセプトを見直してみたり、まだまだそんな可能性に気付いていない中堅・中小企業の経営者はとても多いようにお見受けします。
過剰債務に悩んでおられる経営者の方は、勇気を出して一度ご相談ください。

破綻懸念先のランク・アップ方法については、下記の記事を参考にされてください。

事業再生のアドバイザーについては、下記の記事を参考にされてください。

事業再生に取組む際の専門家の選び方については、下記の記事を参考にされてください。